2006 年 26 巻 7 号 p. 831-834
穿孔性胃・十二指腸潰瘍に対する術式選択, とくに低侵襲手術である腹腔鏡下手術 (大網被覆術) の適応決定に対する術前施行の上部消化管内視鏡検査の有用性を検討することを目的として, 1992~2002年に穿孔性胃・十二指腸潰瘍に対して腹腔鏡下手術を施行した症例を対象に, 当院の腹腔鏡下手術の適応 (血行動態安定, 臓器不全なし, 術前上部消化管内視鏡検査で十二指腸潰瘍狭窄なし) の治療成績 (開腹移行率, 術後合併症発生率, 転帰) をretrospectiveに検討した.その結果, 穿孔性胃・十二指腸潰瘍疑い117例のうち, 即時に開腹術を施行した14例 (ショック3例, 臓器不全など11例) を除く103例に対して上部消化管内視鏡検査が施行された.その内視鏡所見で十二指腸潰瘍狭窄なしと判断された58例に腹腔鏡下手術が選択され, ほか45例 (十二指腸潰瘍狭窄あり, 胃潰瘍) に開腹術が選択された.腹腔鏡下手術が施行された58例の開腹移行率は3.4%, 平均手術時間は106分, 重症術後合併症発生率は7.1%, 術後死亡症例はなし, 平均在院日数は13.8日であった.以上より, 術前の上部消化管内視鏡検査を施行することにより, 穿孔性胃・十二指腸潰瘍に対する腹腔鏡下手術の開腹移行率, 術後合併症発生率を低く抑えることが可能となり, 穿孔性胃・十二指腸潰瘍の術式決定における術前上部消化管内視鏡検査の有用性が示唆された.