抄録
本研究では,テレビ・ドキュメンタリーが現実をいかに再構成(リプレゼンテーション)するかに関して,番組制作者と大学生の意識や態度の違いを調査により明らかにし,テレビ・ドキュメンタリーのリテラシーを育成する際に重視すべき点について検討を行った。調査の結果,番組制作者は大学生よりも,テレビ・ドキュメンタリーについて,1)取材する題材選びで視聴者や物語性が考慮され,2)何かの題材を放送しないのは取材対象者との関係が影響しているという意識が高く,3)現実を再構成したものであり,公平・中立は難しいという意識も高く,4)取材対象者にはたらきかけを行う撮影手法を容認する傾向があることが明らかになった。これらの結果から,テレビ・ドキュメンタリーのリテラシー育成において,メディアは現実を再構成しているというメディア・リテラシーの基本的概念,ニュースとの類似点,公平・中立を実現する手順の難しさ,番組制作者と取材対象者の関係,表現手法の5つの点について理解を促すことが重要であることが示唆された。