スラブ・ユーラシア地域では,社会主義体制の崩壊後,中東欧とCIS地域の間に大きな断絶が生じている。中東欧では民主主義が定着したが,CIS諸国では権威主義的な傾向が強まり,定期的な選挙実施と権威主義的な政治運営が共存する選挙権威主義と呼ばれる体制が出現したのである。前者で選挙による政権交代が常態化したのに対し,後者では政権交代がほとんど起きていないが,2000年代に入り,選挙実施を契機として反体制運動が高揚し政権が崩壊する「選挙革命」がいくつかの国で発生し,権威主義的政権の崩壊において選挙が果たす役割が注目されている。本稿はこうした近年の政治情勢や研究動向をふまえ,選挙革命が何故起きたのかを分析し,それが「民主化」につながるものであったのかを検討することを通じて,この地域における選挙と政権交代の意義について考察する。