抄録
小学5年生の男子の小児甲状腺癌肺転移症例について,放射性ヨウ素治療後20年の経過を報告する。労作時の呼吸困難が強く,小学校の階段を2階の踊り場まで辛うじて上がっていた。胸部写真では,両側肺野に結節状の陰影が多数みられた。数年にわたり,計400mCiのI-131が投与された。現在成人男子に成長し,社会人となっている。小児甲状腺癌の予後は良好といえども,労作時呼吸困難が出現するほどの肺転移に,放射性ヨウ素治療なくして,病勢を食い止めることはできなかったであろうとその治療効果を評価する一方,晩期障害も認められ,注意してフォローしている。