症例は70代の男性,胸部CT検査で気管を右側に大きく圧排する縦隔内甲状腺腫を認めた。甲状腺左葉腫瘤の圧排により呼吸困難症状を認めたため,手術を施行した。左葉は頸部操作のみで摘出しえた。病理学的には腺腫様甲状腺腫を背景にWHO分類のWDT-UMP相当の腫瘍がみられた。本邦の甲状腺癌取扱い規約では,濾胞腺腫の診断となると考えられる。遺伝学的検索でRAS変異がみられたが,良悪性の確定は困難であった。術後経過観察中の2年半後に肺転移を強く疑う陰影が出現した。境界型悪性腫瘍と思われる腫瘍については慎重な経過観察を要する。