北朝鮮の金正恩体制下における「経済改革」は,既存社会主義理論の枠内での解釈や経済管理方法の部分的修正に止まっていることなどから,1960年代にみられたソ連・東欧社会主義国の改革措置と類似した低いレベルの動きと言えるが,同法制化を通じて市場メカニズムを活用する方向性を明示するなど従来と異なる新しい変化もうかがえる。現在,これら改革措置を中心とした金正恩体制の経済発展戦略は,国連制裁により「制裁への対抗」という内向きの性格に変容した上,昨今のコロナ禍と水害によって更なる軌道修正を迫られるなど重大な試練期を迎えている。