1-methylcyclopropene(1-MCP)水溶液への浸漬処理のバナナ果実の追熟に及ぼす影響が調べられた。エチレン処理開始後2日に,緑熟バナナは,コントロールとして水,または0.1,1,10,50,100,1,000 μg L-1の1-MCP水溶液に10分間浸漬処理され,その後20℃暗所下で貯蔵された。50,100,および1,000 μg L-1の1-MCP水溶液で処理された果実では,カラースコアの増加が抑制され,褐色斑点の表面積に占める割合の増加はわずかであり,エチレン処理開始後12日まで低いままであった。浸漬時間が追熟に及ぼす影響を調べるために,エチレン処理開始後2日に,果実は100 μg L-1の1-MCP水溶液に0.5,1,3,6,10または15分間浸漬処理され,20℃暗所下で貯蔵された。なお,コントロールは浸漬処理をおこなわないもののとした。10分間および15分間処理した果実では,カラースコアと褐色斑点の表面積に占める割合の増加が抑制された。追熟の抑制に効果的かつ効率的であった,100 μg L-1の1-MCP水溶液に10分間浸漬処理を行った果実の内部品質はコントロールと差異は認められず,また果実の可食期間は2倍以上に延長された。これらの結果から,1-MCP水溶液によるバナナ果実への処理は,その有用性から極めて実用的な収穫後の処理であることが示唆された。