2012 年 38 巻 3 号 p. 153-158
コマツナは収穫後常温下では急速に黄化し,その品質は劣化する。本研究では,1-methylcyclopropene(1-MCP)処理がコマツナの収穫後の品質に及ぼす影響を調べた。コマツナを0.1μℓ/ℓ,0.5μℓ/ℓ,1μℓ/ℓの1-MCPで24時間,20℃暗所下で処理した。また,1-MCP処理を行わなかったものをコントロールとした。1-MCP処理の後,コマツナを有孔ポリエチレン袋に入れ,20℃暗所下で貯蔵した。その結果,コントロールでは貯蔵3日に葉の先端に黄化がみとめられ,スコアは4未満となった。一方,0.1μℓ/ℓ,0.5μℓ/ℓ,1μℓ/ℓの1-MCP処理を行ったコマツナはそれぞれ貯蔵4日,5日,6日から黄化がみとめられた。これらのことから,1-MCP処理により葉の黄化が遅延することが明らかとなった。1μℓ/ℓで処理されたコマツナのクロロフィル含量は貯蔵3日において他の処理区より有意に高く,その後の減少も遅延しており,クロロフィル含量の減少の遅延は黄化を反映していた。また,1-MCP処理はコントロールと比べ重量減少を抑制し,炭酸ガス生成量を抑制した。さらに,1μℓ/ℓの1-MCP処理は貯蔵中のアスコルビン酸およびカロテン含量の減少を著しく抑制した。これらの結果から,1-MCP処理は収穫後のコマツナの品質保持に有効であることが明らかとなった。