日本食品保蔵科学会誌
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コメ,トウモロコシ,コムギ,サツマイモおよびジャガイモデンプン粒表層タンパク質の抽出と同定
塩野 弘二辻井 良政野口 智弘佐藤 広顕髙野 克己
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2016 年 42 巻 6 号 p. 237-242

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抄録

 デンプン粒は,起源によって粒子径,形状,アミロース含量およびデンプン分解酵素の作用性が異なることで性状の違いがある。さらにデンプン粒の性状にデンプン粒表層のタンパク質(SSP)の関与が推察されており,SSPを減少させたデンプンは糊化特性に変化が生じることが報告されている。しかし,SSPを構成するタンパク質に関する研究例は少ない。そこで私たちは,コメ,トウモロコシ,コムギ,サツマイモおよびジャガイモのSSPを同定することを試みた。デンプン粒のタンパク質含量は起源によって異なり,その値はデンプン粒のクマシーブリリアントブルー(CCB)による染色度(b値)と高い相関がみられた。0.1%水酸化ナトリウムによるデンプン粒中のタンパク質の減少率はデンプンの起源によって異なり,コメ,サツマイモ,ジャガイモ,トウモロコシ,コムギの順で高かった。SDS-PAGEにより,各起源のSSPが19のタンパク質バンドに分離され,そのうち16のタンパク質を同定した。その結果,各起源のSSPからデンプン合成酵素が同定されたほか,コムギSSPからはαアミラーゼインヒビター,ジャガイモからはアスパラギン酸およびシステインプロテアーゼインヒビターといった酵素阻害剤が同定された。また,コメからはグルテリンおよびプロラミン,トウモロコシからはゼイン,コムギからはグロブリン,サツマイモからはスポラミンといった貯蔵タンパク質が同定された。一般的に貯蔵タンパク質は疎水性の高いタンパク質であり,これら貯蔵タンパク質が各起源のデンプン粒の性状に影響を与えている可能性が示唆された。

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