日本食品保蔵科学会誌
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酵素処理米糠を利用したpH制御乳酸発酵によるGABA生産の増進
大友 理宣野島 聡伊藤 綾保苅 美佳畠 恵司戸枝 一喜
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2018 年 44 巻 6 号 p. 309-313

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抄録

 精米時に大量に発生する米糠は,高品質な油脂,タンパク質,ビタミン類,食物繊維などをさまざまな栄養素を含有している。しかし,容易に酸化や酵素分解して風味,品質を損ないやすく,大部分は廃棄物として処理されている。近年,米糠を酵素処理し,それを栄養源とした乳酸発酵によるγ-アミノ酪酸(GABA)の生産方法が示された。GABAは種々の生理作用が報告されており,健康栄養素として注目を集めている。本報告では,さらなるGABAの生産効率向上のため,条件の最適化を検討し,酵素処理米糠11%,GABAの基質としてグルタミン酸ナトリウム11.7%を含む培地にLactobacillus brevis IFO12005を添加し,発酵期間中pHを5.0に保つことで,GABA含有量7.1%(w/w)を達成した。pH無調整の場合と比べ,含有量は4~5倍に増強された。また,発酵生成物は官能試験において不快な匂いを有しておらず,食品本来の風味を損なうことなく本発酵液を添加しGABAを強化することが可能と考えられる。酒造産業においては米糠が大量に発生しその処理が大きな課題となっている。GABA生産のための酵素処理や乳酸発酵などは,酒造産業の既存の技術や,近年日本酒消費量の低下で問題となっている遊休・余剰設備を利用することで容易に実施が可能であり,米糠の高付加価値な有効利用とともに酒造産業にとって複合的な解決策となることが期待される。

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© 2018 一般社団法人日本食品保蔵科学会
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