日本食品保蔵科学会誌
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収穫後のエタノール蒸気処理がバナナ果実のエチレン生合成酵素と追熟関連転写因子の遺伝子発現に及ぼす影響
鈴木 康生山田 瑛祐石原 可菜梶田 萌瑚藤城 聡志岡田 彬保母 侑輝片山 莉奈北村 郁佳
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2020 年 46 巻 3 号 p. 91-98

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抄録

 収穫後のエタノール処理は園芸作物の追熟と老化に影響を与える。バナナ果実においては,エタノール処理は追熟を阻害するという報告と促進するという報告がある。エタノール処理の果実追熟に及ぼす影響は処理の方法や暴露時間など多くの要因に依存すると考えられている。我々は有孔ポリエチレン袋にエタノール蒸散剤を同封することにより,緑熟バナナにエタノール蒸気処理を行った。その結果,エタノール処理はバナナ果実の追熟を促進することが明らかとなった。エタノール処理による果実追熟の促進の機構を明らかにするために,果肉と果皮のエチレン生合成酵素をコードしている遺伝子である,MaACO1MaACO2MaACS1MaACS2と追熟関連転写因子をコードしている遺伝子である,MaMADS1MaMADS2MaMADS7の発現に及ぼす影響を調べた。エタノール処理によってカラースコアの進行が促進される中,果肉のMaACS1の発現を除き,全体として,エタノール処理した果実のこれらの遺伝子の各カラースコアにおける発現パターンはコントロール果実のそれとおおよそ類似していた。これらの結果は,エタノールは本質的にはエチレンによる追熟制御の上流ではたらく追熟関連転写因子の遺伝子発現を誘導し,果実を追熟させるという仮説を支持するものかもしれない。

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