ピーマンは,一般的には低温障害発生温度よりも高い低温下で品質が保持されるが,実際物流における保存環境については,その最適化が求められる。そこで本研究では,種々の保存温度下に28日間貯蔵し,ピーマンの追熟特性および,それに関連して生じる生体分子の変化について検討した。緑熟状態で収穫したピーマンをポリプロピレン袋に非密封の状態で入れて,10,20,および30℃の暗所下で保存した。保存中の表面色の測定から,20℃と30℃では28日間保存果実において,追熟(着色)が開始されたことが確認された。着色の開始は,果柄部の反対側の花落ち部で早く進行した。各温度で28日間保存後のピーマン果実を,上中下の3区分に分割し調製した試料を用いて,RNAシークエンスを実施した。マイクロアレイ解析用ソフトウエアを用いて,遺伝子発現プロファイル解析を行った。主成分分析の結果,第一,第二主成分による2次元プロットから,貯蔵温度によりグルーピングされることが確認された。一方,果実の部位による差は小さかった。保存温度により特徴的な発現パターンを示す4種類の遺伝子を見つけ出し,さらにこれらの遺伝子と類似した発現パターンを示す遺伝子群を探索し,グループ化した。ベン図を用いた解析から,高温側で発現上昇する特徴を示すグループ1(20℃および30℃で発現上昇)とグループ2(30℃で発現上昇)との間では,一部で重複する遺伝子がみられた。一方,他のグループ間では,重複はほとんどみられなかったことから,これらの遺伝子群は,各試料の生理的特性を反映したものであることが示唆された。