食品と低温
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オクラさく果の食品物性と化学成分に及ぼす貯蔵温度の影響
(第1報) オクラさく果の鮮度保持について
田尻 尚士
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1986 年 12 巻 3 号 p. 81-86

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抄録

オクラさく果の鮮度保持性にっき, 食品物性および成分消長の点から開花結実後6日のグリーンスター変種を用い検討した。さく果は緑色ネットと熱収縮ポリビニリデンコロライドフィルムでシュリンクパック包装を行い, 貯蔵温度は低温区として1, 5℃, 常温区は20℃, 中温区は10, 15℃, および凍結区として-20℃区を設定した。
1. 食品物性
針入度, 弾力度および粘性度とも低温貯蔵区および常温区において貯蔵5~41日で物性度は劣化し, さく果は “はり” を消失し, 萎稠軟化し腐敗へと進行し, 貯蔵限界日数は5~7日であった。中温区および凍結区ではこれらの現象は顕著に抑制され, 25日前後の貯蔵が可能となった。
2. 色調
食品物性の劣化と類似した傾向を呈し, 褐色化するが, 測定値と肉眼観測値では見かけ上より測定値が3日前後退色現象が早い。低温区では貯蔵限界日数は10日前後であり, 中温区では20日前後, 凍結区では30日間の貯蔵が可能であった。
3. 総アスコルビン酸含有量の消失度
食品物性の劣化より急速かつ高く, 低温区および常温区でこの傾向がとくに顕著であり, 貯蔵限界日数は5日前後であった。中温区, 凍結区では低下様相は緩慢で低下率はかなり抑制され貯蔵限界日数は25~30日となった。
4. 総ペクチン含有量の消失度
粘性度と極めて類似した傾向で低下した。食品物性度および総アスコルビン酸含有量の低下速度より低温区においては3~5日遅延された。中温区, 凍結区では貯蔵初期にやや低下率は高いが, 貯蔵10日以後はほとんど低下せず極めて安定した状態を呈し, 貯蔵限界日数は低温区で7~10日前後, 中温区, 凍結区で25~30日間の貯蔵が可能である。
オクラさく果の鮮度保持性は貯蔵温度に大きく左右され, 適性貯蔵温度は10~15℃であり, 生食以外ペースト状などでの調理, 加工の大量利用では-20℃が良好である。低温貯蔵1~5℃および20℃では貯蔵初期より大きく品質は劣化し, 貯蔵限界日数は5~7日であった。
本研究の概要は昭和60年9月の本会関西講演会において発表した。

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