日本食品低温保蔵学会誌
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そ菜類の低温耐性についてのアレニウスプロットによる解析
泉 秀実辰巳 保夫邨田 卓夫吉田 保治
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1987 年 13 巻 3 号 p. 77-83

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抄録

数種そ菜類について, 種々の温度下での呼吸量, 脱水素酵素活性および組織切片からのK+漏出速度をアレニウス式で解析し, 低温耐性の強弱とこれらのアレニウスプロットとの関係について考察した。
1) 低温感受性のキュウリ, ナス, サヤインゲン・セイヨウカボチャ, ニホンカボチャおよびサツマイモの無傷そ菜の呼吸のアレニウスプロットには, すべて6.7-10℃の低温でbreakがみられた。これらのbfeak温度は, いずれも低温障害発生の臨界温度にほぼ近かった.アレニウスプロットの形は, そ菜類の種類, 品種により異なった。
一方, 低温耐性が強いとされるジャガイモの呼吸のアレニウスプロットにも, 低温感受性のものとは形が異なるが, 10℃付近にbreakがみられた。
2) 低温感受性のキュウリ, トマト (未熟果, 熟果) の組織切片の呼吸のアレニウスプロットはいずれも低温でbreakを示し, break温度は低温障害発生の臨界温度にほぼ近かった。アレニウスプロットの形はそれぞれ異なった。一方, 低温耐性のニンジン, ダイロンの組織切片の呼吸のアレニウスプロットは, ニンジンが一本の直線になるのに対し, ダイコンでは低温でbreakがみられた。
3) サツマイモとジャガイモの組織切片の脱水素酵素活性のアレニウスプロットは, いずれも10℃付近にbreakがみられた。breakの形は異なるが, 両者共低温下での脱水素酵素活性に変曲を示した。
4) 低温感受性のキュウリ, ナス, サヤインゲン, トマト, セイヨウカボチャ, ニホンカボチャおよびサツマイモの組織切片からのK+漏出速度のアレニウスプロットは, すべて6.7-12.5℃の低温でbreakがみられた。break温度は, カボチャでは低温障害の臨界温度より2-3℃高かったが, それ以外はすべて低温障害発生の温度とほぼ一致した。
いずれのそ菜類もbreak温度以下では, bfeakより上の温度範囲のものと比較してK+漏出量の割合が増加した.一方, 低温耐性が強いとされるジャガイモ (18.5℃), ニンジン (10℃), ダイコン (19℃) の組織切片からのK+漏出速度のアレニウスプロットにもbreakが認められた。

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