抄録
魚卵塩蔵品のうち脂質含有量の低いたらことかずのこを5℃で4週間, -3℃で8週間, -18℃で16週間貯蔵し, それぞれ一定期間毎に含有脂質の性状および組成の経時的変化を調べ, 貯蔵温度, 貯蔵期間および脂質含有量の相違と脂質酸化との関係について検討した。総脂質含有量はたらこで1.5%, かずのこで3.5%であり, 貯蔵日数の経過により, 経時的減少が両試料でわずかに認められた。総脂質の酸価, 過酸化物価およびカルボニル価は上昇し, ヨウ素価は減少しており, 総脂質の劣化を示していた。次に総脂質を構成する各脂質の含有量の変化についてみると, 両試料とも複合脂質区含有量の減少, 中性脂質区含有量の増加, さらにトリアシルグリセロール, ホスファチジルコリン含有量の減少, 遊離脂肪酸含有量の経時的増加がみられ, これらの変化はかずのこにおいて大きかった。各脂質区の主要脂肪酸組成比の変化にっいては, 両試料とも29 : 5, 22 : 6酸のような高度不飽和脂肪酸組成比の減少, 16 : 0, 18 : 0酸のような飽和脂肪酸組成比の相対的な増加が認められた。以上の変化は各貯蔵温度の場合で認められたが, 貯蔵温度の低いほど小さく, たらこ, かずのこの低温による貯蔵はその含有脂質の酸化抑制に対して効果的であることを認めた。