抄録
2種のキットは従来法と同様に, 選択増菌培地としてHTT培地を用いたときが, 陽性を示した試料の数が多かった。
食品に適した培養を行えば「アッセイ」は従来法と一致した結果が得られることが分かった。冷凍鶏肉や冷凍液卵のサルモネラを「アッセイ」で検出するには, HTT培地を用いて選択増菌培養し, ついでGN培地を用いて後培養するのが最適で, 約44時間で判定できた。また, 非冷凍鶏肉でも冷凍鶏肉や冷凍液卵の場合と同じ培養法が最適であるが, ただしGN培地による後培養が省けるので, 38時間で判定できた。冷凍食品で後培養が必要な理由は, 凍結傷害のためにサルモネラの選択増菌培地中の生育が遅いためと考えられた。
「テック」では, 冷凍品でも後培養を行う必要がなく, 38時間で判定できた。これは, Fig.2に示す様に「テック」の方が感度が良いために, 冷凍品の場合, 選択増菌で生育する菌数が「テック」にとって陽性を示すのに十分な菌濃度であるが, 「アッセイ」にとって不十分であったためと考えられた。
評価した2種のキットは, それぞれの食品に適した培養を行えばサルモネラ汚染試料の検出率はほぼ100%であり, 容易に判定でき, 検査時間も従来法で4日以上かかるところを38時間あるいは44時間に短縮されるために, 食品の自主検査に適したキットである。ただし, 冷凍食品のサルモネラ検査には後培養の不要な「テック」が適していると思われる。
このようなキットがわが国でも, 米国のAOACのような組織によって公定法として認可され, 食品の工程管理等に普及することが望ましい。
なお, 本報文の要旨の一部は, 平成4年度秋季第36回日本食品低温保蔵学会大会で発表された。