抄録
市販エチレン除去資材および天然系資材19種類について, エチレン除去速度および除去率に及ぼす湿度と吸水の影響を調べた。その結果, 活性炭系資材1種類, パラジウム触媒系2種類および臭素処理モレキュラーシーブ1種類の4種類は, 高湿度条件下においても高いエチレン除去性能 (除去速度と除去率) を有しており, また, 吸水してもエチレンを放出することはなかった。合成ゼオライト系除去剤は, 高湿度条件で除去能力が著しく損なわれるなど, モレキュラーシーブと類似した除去特性を示した。予想に反し, 乾燥剤が添加されている活性炭系除去剤2種類は, ともに高湿度条件で除去率の低下がみられ, 吸水によるエチレンの放出も認められた。これらのエチレン除去特性は活性炭単独の除去特性に類似していた。フィルム状およびシート状資材および天然系資材には実質上エチレン除去機能は認められなかった。
エチレン除去剤の特性評価結果が実用面での鮮度保持効果と一致するか否かを調べるため, ブロッコリーのポリエチレンフィルムハンカチ包装貯蔵試験を実施した。クロロフィルモアスコルビン酸, 黄化度等の測定結果から総合的に評価した除去剤の鮮度保持効果は, パラジウム触媒系除去剤が最も高く, 除湿剤添加活性炭および合成ゼオライト剤の鮮度保持効果はこれよりも劣った。除去剤によるブロッコリーの鮮度保持効果は, 除去剤のエチレン除去特性試験で得られた結果とよく一致したことから, 市販エチレン除去剤および天然系資材の評価結果は, 実際の流通場面においても有効と考えられる。
ハンカチ包装出荷の場合には, MA効果が十分得られない点をエチレン除去特性の優れた除去剤の利用によって補うことは, 鮮度保持上望ましい対策といえる。