抄録
DHAを添加した調製粉乳を試料とし, 酸素量を制御したものおよび未制御のものを各々25℃と5℃に24週間貯蔵し, 含有するTLならびにDHAの経時的動向について調べた。さらに貯蔵温度や酸素制御の脂質劣化に対する効果についても検討した。
全条件下において, TL含有率の経時的変化は見られなかった。またTLの酸化指数においては, 酸素を制御した場合では明確な変化は見られなかったが, 酸素を制御しないで貯蔵した場合においては各指数とも経時的に上昇し, 脂質劣化が進んだことを示していた。さらに酸素を制御しない場合のAV, PVにおいては5℃貯蔵よりも25℃貯蔵において変化が大きく, 脂質劣化に対する低温貯蔵の効果を認めた。
TLを構成するNLとCLの各組成比の経時的変化について見ると, 酸化指数の場合と同様に, 酸素制御の脂質劣化に対する有効性が認められたが, 貯蔵温度による顕著な差異は見られず, 低温貯蔵の効果は認められなかった。
TLを構成する主要脂肪酸 (18 : 1n9酸, 16 : 0酸, 18 : 2n6酸, 18 : 0酸, 12 : 0酸および14 : 0酸) 組成比の経時的変化は, 全条件下において小さく, 特に酸素を制御した場合には脂肪酸の酸化分解はほとんど進行しないことが判明した。また, DHA組成比の経時的変化については, 酸素を制御しないで貯蔵した場合の, CLにおいてのみ顕著な低下が認められた。この場合, TLに占めるCL組成比が低いため, TL全体としての経時的変化はほとんど認められなかった。これらの結果から, 貯蔵温度と酸素を制御した場合, 添加された調製粉乳中のDHAの持つ様々な生理的効果が長期的に保持されるものと考えられる。