抄録
調整乳 (脂肪3%, 65℃, 30分間殺菌) にスターターおよびレンネットを添加し, 30℃, 40分間保持した後凝固乳を得た。さらに, 凝固乳から得たカードのレスティングおよび2%食塩添加およびニーディングを行い, モザレラチーズを調製した。この過程におけるカゼインおよびパラカゼインの結合性カルシウム (Ca) および無機リン (Pi) 量を測定し, Ca/Piモル比を求めた。また, カゼインおよびパラカゼインの尿素-およびSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (PAGE) を行い, Ca/Pi比との関係について検討した。
(1) 調整乳のカゼイン1gあたりのCaおよびPi結合量は, それぞれ32.4および15.4mgであり, Ca/Piモル比は1.62であった。また, スターターおよびレンネットを添加した凝固乳のクッキング後のパラカゼインではそれぞれ16.2および10.3mg, ならびに1.21であった。
(2) カードをレスティング, 2%食塩添加およびニーディングすると, パラカゼイン1gあたりのCaおよびPi結合量は, それぞれ15.0および11.0mgであり, その比はさらに1.06に低下した。
(3) カゼインの尿素-PAGEでは, αs1-バンド強度は調整乳にスターターおよびレンネットを添加し, 30℃, 40分間保持後に減少し, αs1-Iカゼインが出現した。
(4) カゼインのSDS-PAGEでは, κ-バンド強度は調整乳にレンネット添加直後から著しく低下し, a-バンドが出現した。また, β-バンド強度はわずかに低下したが, αs2-バンド強度はほとんど変化しなかった。