抄録
ショ糖, グルセリンおよびポリグリセリンの脂肪酸エステルの抗菌作用を検討するため, 灰色かび (Botrytis cinerea PEAS.) を各種エステル溶液を含んだ培地で培養し, その生育変化を検討した。
1%濃度のエステルを含んだジャガイモ煎汁液培地で25℃で96時間培養した結果, カプリル酸 (C8), カプリン酸 (C10) のショ糖脂肪酸エステル (SE) では培養中ほぼ完全に菌の生育を抑制した。ラウリン酸 (C12), ミリスチン酸 (C14), パルミチン酸 (C16), ステアリン酸 (C18), オレイン酸 (C16 : 1) とエステル結合した脂肪酸の炭素数が増加するほどSEの抗菌活性は小さくなった。しかし, いずれのSEも対照区に比べ菌の生育を抑制した。モノカプリル酸グリセリドでは完全な発育抑制が見られたが, ポリグリセリン脂肪酸エステル (PGE) ではラウリン酸PGEが約40%菌の生育を抑制したが, ステアリン酸PGEでは抑制効果はなかった。また, PEGでは抑制効果はグリセリンの重合度とは関係なかった。
培地へ添加量を0.5, 0.3%と低下させるとエステルの抗菌活性も低下したが, MCは0.3%でも完全に菌の発育を抑えた。
抗菌活性が強かったエステル類の溶液にブドウを浸せき処理したところ, 抗菌作用の強かったカプリル酸SEで脱粒が抑制され, 腐敗も少なった。しかし, MCではかえって品質が悪くなった。
以上の結果からショ糖脂肪酸エステル (SE) は灰色かび病菌に対して抗菌作用を持つことがわかり, 収穫後の抗菌剤として期待できると考えた。