Journal of Applied Glycoscience
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第16 回糖質関連酵素化学シンポジウム
各種海洋性細菌が生産するシアル酸転移酵素の性質とその可能性
梶原 ひとみ峯 利喜山本 岳
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2009 年 56 巻 2 号 p. 77-82

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抄録

シアル酸は,複合糖質糖鎖の非還元末端に存在することが多い糖であり,シアル酸を含む複合糖質が生体内で様々な役割を有していることが多くの研究により示されている.そのため,シアル酸含有糖鎖の大量調製は,重要な研究テーマの一つとなっている.シアル酸転移酵素を用いるシアリル化は,複合糖質の機能を損なうことなく,温和な条件下で効率よくシアル酸を付加させることが可能であることから,極めて有効な手法と考えられる.近年まではタンパク質の糖鎖修飾は,真核生物のみにみられる特徴と考えられていたが,細菌においても糖鎖修飾された糖タンパク質が存在することが明らかにされ,多くの糖転移酵素が種々の細菌から得られている.我々は,これまでにシアル酸転移酵素活性を示す細菌を20菌株以上単離している.これらの細菌を同定した結果,Photobacterium属およびVibrio属にシアル酸転移酵素を生産する種が多いことが明らかになった.具体的には,α2,3-シアル酸転移酵素生産菌株として,P. phosphoreum JT-ISH-467株,Vibrio sp. JT-FAJ-16株等がある.α2,6-シアル酸転移酵素の生産菌株としては,P. damselae JT-0160株,P. leiognathi JT-SHIZ-145株等が挙げられる.また,種の同定には至っていないが,α2,3-およびα2,6-シアル酸転移酵素の両酵素を生産する菌株として,Photobacterium sp. JT-ISH-224株を単離している.これら海洋性細菌由来のシアル酸転移酵素の生産レベルはいずれも高く,いずれの酵素も大量供給が可能である.

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© 2009 by The Japanese Society of Applied Glycoscience
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