澱粉科学
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多糖類分子鎖間および鎖内包接に関する研究(I)
ムンントール包接錯体
鈴木 晴男秋元 秀司鴨川 俊
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1977 年 24 巻 4 号 p. 112-119

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抄録

 多糖類(おもにジャガイモ・デンプン)を用いてl-メントールの包接を行ない,次のような結果をえた. (1)乾燥多糖類をメントールのメタノール溶液に浸漬し,母液ごと乾燥することにより,メントールをもっとも効率よく包接することができた.メントールの溶媒として,メタノール以外のものでは包接は行われなかった.また,包接錯体からのメントール抽出にも,メタノールがもっとも適していた. (2)デンプン中の水分およびメントールの溶媒であるメタノール中の水分によって,包接が妨害された. (3)デンプンにメントール・メタノール溶液を加えると,メタノールとメントールの両方がデンプン粒中にとりこまれるが,このときとりこまれたメタノールが乾燥時に揮散するときに,遊離状態で残存していたメントールと入れかわり,さらに多くのメントールが包接されるようになるものと思われた. (4)多糖類によるメントールの包接は,非晶質および結晶質両方の領域で起こるが,結晶ミセルに包接されるメソトールの方が多いように思われた.また,ヘリックス構造を持たないセルロースにもメントールが包接されることから,この包接はおもに多糖類の分子鎖間で行われるものと思われた. (5)多糖類・メントール包接錯体は乾熱に対しては非常に安定であったが,湿気に弱く高湿度の空気中ではメントールが徐々に消失してしまった.

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© 日本応用糖質科学会
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