2020 年 24 巻 2 号 p. 87-95
本研究は,特別養護老人ホーム(以下,特養)に転職した看護師が体験したリアリティショックの様相を明らかにすることを目的とした.病院で看護経験はあるが,特養での常勤は初めてで,転職後2~5年目の常勤看護師14人に半構成的個人面接を行った.結果として,11カテゴリー,3つの大カテゴリーが抽出された.特養に転職した看護師は,特養自体や特養の看護師の役割についてなにも知らないことが多く,特養の現実に直面し【転職後に感じたギャップへのとまどい】を感じていた.ギャップに対し【受け入れがたい特養の現実と価値観への反発】を感じ,ギャップを受け入れる過程で【看護師としてのアイデンティティの揺らぎ】という危機的な特有の反応を呈した.リアリティショックを生じやすい特養に転職する看護師に対し,インターンシップ制度の導入や先輩看護職による適切なフィードバック等のサポート体制を整える必要があることが示唆された.