抄録
本研究の目的は,大分県域における伝統的地域文化としての魚介類食の地域的展開とそれらの立地要因を解明することである。研究の結果は,以下のようにまとめることができる。県内各地488件のアンケート調査の結果,大分県には摂食地域の分布パターンとして,4 の大分類,すなわち,①凡県域摂食型,②広域摂食型,③特定地域摂食型,④幻となりつつある魚介料理と,その中に11 の小分類を見出すことができた。伝統的魚介類食の展開の背景には,様々な歴史・経済・文化的要因がはたらいていた。また,分布の市町村別展開をみると,高摂食地域は,比較的海に近い内陸農村地域に展開しており,中摂食地域が沿岸の都市・漁業地域に,低摂食地域が内陸奥部山間地域に展開していた。伝統的魚介類食は,貴重な地域文化である。それゆえに,その記録を残すこと,さらにそれらを使った地域振興を考えていくことが重要である。