地理空間
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ハルビン市方正県の在日新華僑の僑郷としての発展
山下 清海小木 裕文張 貴民杜 国慶
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2013 年 6 巻 2 号 p. 95-120

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抄録

 ハルビン市方正県は,第二次世界大戦の終戦末期,満蒙開拓団の日本人が多数亡くなったところである。と同時に,終戦後,残留孤児・残留婦人として多くの日本人が現地に残されたところでもある。1972 年の日中国交正常化後は,方正県の中国残留邦人が,家族とともに日本へ帰国し,また同郷人を日本へ呼び寄せ,方正県は数少ない「中国北方の僑郷」とよばれるようになった。本研究では,方正県における現地調査にもとづいて,方正県がいかにして在日新華僑の僑郷に発展していったのかを明らかにすることを目的とした。日中国交正常化以後,日本人による水稲作の技術指導により,方正県の水稲栽培は飛躍的に発達し,良質の方正県産米はブランド米となっている。中国残留邦人の日本への帰国に伴い,血縁・地縁関係を利用して数多くの方正県人が親族訪問,出稼ぎ,国際結婚,留学などの形で日本へ行き,日本に定住または長期滞在するようになった。日本在留の方正県出身者の人口増加に伴い,方正県在住の親族への送金などによって,日本からの資金が方正県へ流入するようになった。地元政府も,僑郷の特色を活かした発展計画を進め,方正県の中心市街地も,日本との密接な関係を示す店舗や施設が多い。

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© 2013 地理空間学会
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