抄録
本論文では,ホーチミン市におけるバックパッカーエリアの空間的特徴として以下の3点を指摘した。第1に,かつてのサイゴン駅の沿線地域に位置するバックパッカーエリアには,部分的であれ鉄道駅に関連した業種が立地していた点を旧版地図の分析から示した。第2に,バックパッカーエリアの中核をなす4本の街路は,業種別構成を確認すると,それぞれ独自のパターンをなしている点を示した。第3 に,街路別の特徴は,バックパッカーエリアの拡張過程を反映していると推察される点を指摘した。以上から,ホーチミン市におけるバックパッカーエリアは,オルタナティブツーリズムが展開される均質的な空間ではなく,街路ごとに特徴をもった都市空間であることを明らかにした。