高等教育研究
Online ISSN : 2434-2343
特集 高大接続の現在
大学と高校の接続の動向と課題
吉田 文
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2011 年 14 巻 p. 169-181

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抄録

 本稿は,この特集「高大接続の現在」に寄せられた8本の論稿をもとに,日本,欧州,アメリカ,東アジアにおける,近年の大学と高校の接続の課題は何か,その背景は何か,それらの課題に対してどのような政策的対応がなされているかを,比較検討することを目的とする.

 検討にあたって,接続においてもっとも重要な役割を果たしてきた入学者選抜に関して,その基準(学力か非学力か),その主体(高等教育か後期中等教育か)の2軸で構成される4つの象限に,それぞれの社会を位置づけた. 検討の結果,どの社会においても高等教育進学者の増大にともない,従来の選抜方法が十分に機能しなくなり,多様な方法,多元的な評価が導入されていることが明らかになった.また,選抜の局面での接続だけではなく,後期中等教育と高等教育の教育課程での接続を図るための諸方策が実施されていることも,共通の傾向として見出すことができた.

 さらに,欧州やアメリカでは,従来,接続の問題は教育機会の社会的不平等の問題として扱われてきたことを特徴とする.近年,接続が教育課程の問題となることで,教育機会から学習成果の社会的不平等が研究課題になっている.日本においても研究領域の拡大の検討が必要であることを指摘した.

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© 2011 日本高等教育学会
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