2018 年 10 巻 2 号 p. 91-103
本研究の目的は、企業がオンライン上のプラットフォームに不特定多数の消費者の参加を促し世界共通の製品に関わる新たな価値を探索し調整するメカニズムを探ることにある。
グローバル化に伴い、潜在的な需要の大きな伸びが期待される中国やインドはじめ新興国の現地に適応しつつ、既存市場を含め標準化された製品をいかに効率的に販売するかが企業のさらなる成長に欠かせない状況になってきている。一方で、世界各地の消費者が企業の価値提案をどのように知覚し評価しているかを探るのは容易でない。また、製品を使用する文脈を捕捉するのも、消費者それぞれの深層で育まれる主観的で状況依存的な製品に対する想いや意味づけをバイアスを挟まず読み解くのも企業にとり簡単でない。結果として、企業主導による消費財に関わる価値の創造と提案が従来通り受け入れられる可能性は低くならざるを得ない。さらに、消費財はその製品に求める特性や嗜好が国を超えて異なり、かつ市場の複雑性は産業財に比べ高いことから消費財の標準化の効率は低いといわれる。
しかし、本研究では消費財だからこそ、たとえ標準化された製品であっても消費者による提案と評価を通じ次第に標準化する価値と現地適応する価値を同時に備えることになる仕組みを考察する。そこでは、企業がグローバルな規模で消費者から特定のテーマに対する提案を募集して消費者間でブランドらしさを評価し新たな価値の発見を試みる。
情報通信技術が進展しグローバル化が進む中で、企業と消費者の協働による価値の探索に新たな視点を提起し、最後に実務的インプリケーションを論じる。