抄録
本稿のテーマは、環境の不確実性と多国籍企業(MNC)の戦略選択、とりわけ市場参入方式の選択について、リアルオプション(RO)理論の観点から検討することである。RO理論を敷衍すると、MNCは市場参入方式を選択する際、各方式が将来生み出し得るキャッシュフローの現在価値以外に、それに内在するオプション価値を考慮に入れるだろう。本稿では、どのような条件の下で特定の市場参入方式に内在するオプション価値が高まるのか(したがって、特定の市場参入方式を選択するのか)を検討する。本稿ではまた、RO理論が生み出す最適な市場参入方式に関する答えが、伝統的な国際ビジネス理論とどのように異なるのかを論じるとしよう。最後に、RO理論と伝統的な国際ビジネス理論の違いについて明らかにしたうえで、RO理論が国際ビジネスの伝統的な理論を補完し、多国籍企業の戦略選択に対する不確実性の影響を体系的に分析、説明するツールになり得ることを示す。