国際ビジネス研究
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研究論文
新興国企業による外部資源の創造的活用と市場機会の追及
ブラジルのビューティ企業ナチュラの国際化
金﨑 賢希
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2015 年 7 巻 1 号 p. 49-66

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抄録

1970 年代以降、新興国を出自とする企業のグローバル化が進み、現在、世界市場におけるプレゼンスは無視できないほど高まっている。新興国企業はグローバル市場でどのような競争優位および能力を活用しているのか、そしてそれらはどのように形成されたのか。
先進国多国籍企業の研究によって開発されたコンセプトや理論は、新興国企業にも当てはまるのだろうか。OLI 理論をベースに、新興国企業の存在を説明したものとして、投資発展経路説がある。しかし、同説は単なる分類に過ぎない、あたかも新興国企業は先進国多国籍企業をキャッチアップしているように見えるといった批判がある。段階を経るにしたがい、当該国の企業は能力を蓄積するというが、それは果たしてどのような企業特殊的優位・能力なのだろうか。そして、その能力をどのように蓄積しているのだろうか。本国の環境と企業の能力の関係はいかなるものか。
本稿では、ブラジルの化粧品企業ナチュラを取り上げ、その置かれている状況の中で、技術力が乏しいと考えられてきた新興国企業がどのように現地資源を創造的に活用し、グローバルな市場機会を追求してきたかを明らかにした。
ナチュラは、新しい価値を創造し、グローバルに広がりつつあった市場機会を追求するために、女性の販売員、ブラジルの熱帯雨林と伝統的なコミュニティなどの現地資源を活用した。しかし、それは必然でも、安価で安易な、誰もができる、あるいは資金さえあればできるような選択肢ではなかった。その置かれている環境のなかで、特異なフィロソフィーをもった起業家がステークホルダーと互酬関係を構築することで可能になった。

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