抄録
本研究は、日本市場に立地する在日外資系企業の COEs (Centers of Excellence) と非 COEs の間で外部特性、内部特性、経営成果の差を分析する。外部特性とは、COEs による顧客や競合企業など外部のステークホルダーとの関わりに関することである。外部特性として日本子会社から見た日本市場の厳しさ、日本市場の位置づけに着目した。さらに研究開発 COEs の場合は、それら以外の外部特性として、日本企業から知識を習得する方法にも着目した。内部特性とは、MNE 内部に関わることである。内部特性としては、人事、意思決定、役割、研究開発特性(研究開発 COEs のみ)に着目した。経営成果は、売上高成長率、売上高営業利益率、新製品開発、ブランド・イメージ、品質、納期、従業員満足度で捉えた。 在日外資系企業 271 社をサンプルにして研究開発、生産、販売の機能ごとに COEs と非 COEs の外部特性、内部特性、経営成果の差を分析するために t 検定を行った。その分析結果から明らかになったことは以下の通りである。
本研究では、販売 COEs は販売・非 COEs に比べて売上高成長率と売上高営業利益率が高く、生産COEs は生産・非 COEs に比べて納期で成果が出て、研究開発 COE は研究開発・非 COEs に比べて新製品開発で成果が出て売上高営業利益率が高いので多国籍企業にとって COEs の開発が有意義であることを示した。人的資源の能力向上のための教育プログラムやトレーニングの強化は、販売 COEs と研究開発 COEs の開発手段として有益であり、能力の他国の拠点での活用を促進するためのグローバルな経営理念の浸透は、全ての COEs の開発手段として有益であり、グローバル戦略の共有は、販売 COEs と生産 COEs の開発手段として有益であることを指摘した。
さらに日本市場の位置づけの高さや子会社の自律性は、COEs と非 COEs で差がなく、本社側が COEsの開発において能動的に動いていない側面も示された。