社会言語科学
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同一発言順番内での置き換えにおける中断部を構成する言語的要素の記述的研究
原田 幸一
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2016 年 19 巻 1 号 p. 151-165

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抄録

本稿は,首都圏在住の若年層による日常会話をデータとして,同一発言順番内で行われる置き換え(STR)の中断部に見られる言語的な要素(「中断部要素」と呼ぶ)を網羅的に収集し,その使用を記述した.387例のSTRにおいて中断部要素が使用され,得られた中断部要素の総数は465例であった.分析の結果,Levelt (1989)による分析と同様に,日本語のSTRも訂正と言い換えに分けられ,訂正と言い換えの異なりに応じて中断部要素が使い分けられることが明らかとなった.中断部要素は機能的な観点から,訂正シグナルと言い換えシグナルに分けられ,それぞれに属する典型的な中断部要素は,訂正シグナルが否定表現「ジャナイ」「チガウ」と遭遇系感動詞「ア」「ン?」で,言い換えシグナルが言い換え表現「トイウカ」とナニ系疑い表現「ナニ?」であった.また,中断部要素が複数使用される場合の典型は「ア チガウ」「ア ジャナイ」「トイウカ ナニ?」であり,中断部要素の使用順序に「遭遇系感動詞→否定表現/言い換え表現→ナニ系疑い表現」という傾向があることを指摘した.

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© 2016 社会言語科学会
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