景観生態学
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原著論文
近赤外線センサ搭載UAVを用いた効率的な植生図作成手法の開発
丹羽 英之森定 伸小川 みどり鎌田 磨人
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2020 年 25 巻 2 号 p. 193-207

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抄録

植物社会学とリモートセンシングの融合は,植生図作成におけるリモートセンシング利用の課題である.本研究では,LARS(low altitude remote sensing)とエキスパートナレッジを併用した植物社会学的植生図の作成技術を開発することを目的とした.宝が池公園(京都市左京区)の森林(以下,宝が池の森)を調査対象とした.2019年6月21日から23日にかけて74地点で群落組成調査を実施した.宝が池の森の現存植生を勘案し,落葉樹の落葉が最も進む3月とツブラジイが開花する5月にUAV(unmanned aerial vehicle)を使い空撮した.3月の空撮では近赤外線センサも使い撮影した.エキスパートナレッジにより,アカマツ-コバノミツバツツジ群落,コナラ-アベマキ群落,ツブラジイ群落とスギ-ヒノキ植林に分類した.さらに,アカマツ-コバノミツバツツジ群落は3つの下位群落と1つの移行群落,コナラ-アベマキ群落は2つの下位群落に分類した.オルソモザイク画像,CHM(canopy height model),NDVI(normalized difference vegetation index),アカマツの密度を使い,エキスパートナレッジによる植生分類結果に合致する群落境界を作成した.LARSで得られる高地上分解能画像に深層学習による画像検出を応用することで,群落境界の作成において重要な情報となるアカマツの密度を算出することができた.群落境界の作成において,もう1つ重要な情報となったCHMは,LARSに縮尺1/2500のデジタルマッピングデータ(京都市発行)を加えることで作成した.本研究で開発した方法は,UAVの適時性を活かした2回の撮影,植生の解析に有用な近赤外線センサの利用により,低コストかつ短期間で群落境界を作成することができ,従来の目視判読による方法より客観性や再現性が高い.本研究で作成した植物社会学的植生図は,詳細な立地評価の基盤図となり,正確な植生の評価が可能となる.

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© 2020 日本景観生態学会
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