景観生態学
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原著論文
鳥取県を事例としたロードキル記録の現状と課題
末次 優花日置 佳之
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2020 年 25 巻 2 号 p. 209-234

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抄録

ロードキルとは動物が道路上で車に轢かれ死傷する現象である.ロードキルの抑制は自然環境への影響や交通安全の観点等から重要な社会的課題である.本研究では,ロードキル記録に着目した.ロードキル記録はロードキル多発地点の特定や発生要因の解析,防止対策の提案,動物の生息状況の把握等に利用できるなど,ロードキル問題解決の基礎となる上に,生物情報という観点からも重要である.また,ロードキル記録は,悉皆データであり,多量性,多種性を持つため,記録の体系化は重要である.しかしながら,これまでの研究で,ロードキル記録の内容と体系化に問題があると指摘されている.そこで本研究では,鳥取県を事例研究地として県下全ての道路種別及び動物種におけるロードキル記録の現状と課題を明らかにし,関係各機関が行うべきロードキル記録の改善内容や方法について提案を行った.加えて,ロードキル記録に問題が生じる根本的な原因についても言及し,根本的な解決策の提案も行った.2018年から2019年にかけて,電話,メール,直接訪問により,道路管理者等,警察,県の傷病鳥獣保護窓口,博物館を対象に,ロードキルの記録状況について聴き取り調査を行った.その結果,事例研究地においては,ロードキル記録が無い機関・部署が存在したほか,記録が保管されていても,記録内容に課題があることが明らかとなった.記録不備の原因は,一部(高速道路)を除いて,ほとんどの関係機関にロードキル記録を研究や対策に活用するという認識が無く,実際に活用されていなかったことである.課題解決のためには,各機関にとってのロードキルを記録することの必要性と負担を勘案した上で,ロードキル記録の内容や記録様式を改善することが望ましい.また,ロードキル記録の問題を根本的に解決するためには,新たにロードキル記録システムを構築するとともに,法令等による制度上のロードキルの位置付けを行うことが望ましい.

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© 2020 日本景観生態学会
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