2019 年 10 巻 1 号 p. 19-26
本研究の目的は,認知症の行動・心理症状(BPSD)を有する要支援者の要介護状態への移行予防についての示唆を得ることである.A 市の2014 年度と2016 年度の介護保険認定調査データより,心身機能や日常生活動作(ADL),手段的日常生活動作(IADL)の観点からBPSD 関連項目に該当する要支援高齢者が要介護状態へ悪化する要因についてロジスティック回帰分析を用いて検討した.その結果,介護度の悪化には,「薬の内服」,「日常の意思決定」,「金銭の管理」が,維持・改善には,「歩行」が有意に関連していた.つまり,BPSD 関連項目に該当する要支援高齢者に対しては,介護度の悪化を予防するために,早期よりIADL の低下予防に介入し自立を支援することや日常生活場面での意思決定を支援することが重要であり,また,歩行能力の向上を図ることは,介護度の維持・改善へつながることが示唆された.