沙漠研究
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原著論文
モザンビーク国ナカラ回廊地域における土壌侵食防止技術の評価
成尾 和浩CÁSSIMO Watemua A.小出 淳司大澤 和敏後藤 章
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2018 年 28 巻 2 号 p. 45-58

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抄録

モザンビークでは,政府関係機関や複数のドナー,NGO等によって土壌侵食防止のための取り組みが行われているが,各技術による土壌侵食防止効果を圃場レベルで定量的に比較検証した事例は極めて限られている.本研究では,モザンビーク国ナカラ回廊地域に位置するNampulaとLichingaにおいて,雨期の土壌侵食防止技術の効果を評価するための圃場試験を実施した.Nampulaの試験は3年間実施し,作物は,キマメ,トウモロコシ,キャッサバを順に栽培した.また,Lichingaでは2年間試験を実施し,キマメ,トウモロコシを順に栽培した.最小耕起は,土壌侵食を57%減少させ,作物収量の低下をまねくことはなかった.ソルガム,メイズ,キマメ,ヒマワリによる残渣マルチは,それぞれ62%,70%,90–95%,51%,土壌侵食量を減少させた.しかし,ダイズ残渣については,土壌侵食の防止に効果が認められなかった.一方,ダイズ残渣マルチは,マルチの中で唯一,マルチ無しに比べ作物収量を有意に増加させ,その収量はマルチ無しの約2倍となった.ベチベル草植生帯は,土壌侵食量を77%減少させた.また,シロアリによる食害試験では,ベチベル草の葉は,シロアリの食害を一切受けず,シロアリの増加をまねく危険性がないことが示された.キマメのアレイクロッピングはキマメ残渣マルチと同程度の土壌侵食防止効果を示したが,作物収量を増加させることは出来なかった.キマメのアレイクロッピングは剪定の労力が増えるため,それに見合った増収効果が得られなかった今回の試験結果では,同技術は農家には採用され難いと考えられる.今回検証した技術の内,最も導入が容易で効果が高いと考えられるのは,最小耕起に作物残渣を組み合わせた処理である.本技術は特別な材料を一切必要とせず,土壌侵食の防止だけでなく労働力削減の面でも高い効果が期待出来る.但し,シロアリの多い圃場では,作物残渣の代わりにベチベル草植生帯を最小耕起と組み合わせることが望ましい.なお,ダイズ残渣については,作物収量の増加が期待出来るが,土壌侵食の防止効果は期待出来ないため,他の技術と併用することが必要である.

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© 2018 日本沙漠学会
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