野生種トマトは,南米・アンデス山地の太平洋沿岸やガラパゴス諸島に分布し,自生地の多くは乾燥地や半乾燥地で独自の多様な生態系を作り上げている.これらは,人々がトマトを利用していく上で大変重要な形質を多く含み,品種改良をする上で貴重な遺伝資源となっているが,その形質や生理学的な特徴はほとんど知られていない.その一方で,地球規模の環境変化,人為的な開発により種自体が絶滅,あるいは自生地そのものの消失が危惧されている.また,利用にあたっては,国際法が適用され自生地からの導入や利用が規制されている.本稿では,野生種トマトについて種の特性を詳述するとともに,遺伝資源としての保全,利用上のルールなどについて概説する.