沙漠研究
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展望論文
豪州の地球温暖化と水枯渇に対応する腎臓医療
永井 恵
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2021 年 30 巻 4 号 p. 63-69

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抄録

近年の地球温暖化により引き起こされる気候変動,とくに陸地乾燥に伴い世界中で水資源が枯渇しつつある.とりわけ豪州はその傾向が強い一方で,生活習慣病などを原因とする重大な疾病に対する治療の需要は高まっており,その治療自体が多大な環境負荷を与えている.また,地球温暖化による平均気温上昇は熱中症や感染症の有病率を上昇させ,健康被害を及ぼす.腎臓は水分・塩分の保持や排泄,老廃物や毒素の除去を担う臓器である.糖尿病などにより腎臓の機能が失われると,慢性腎不全に至る.腎不全患者の生命維持のために維持透析治療を行うが,一人当たり年間10.2 tCO2-eq,水消費500 L/日の環境負荷がかかる.本邦を例にとると,透析患者は350人に1人であり,決してまれな治療とは言えず,世界的にみても,さらに患者数は増加の見込みである.環境問題に先進的な豪州や英国では,水の再利用,太陽光の利用,適切な透析方法の推進などのイノベーションをすすめる取り組み「Green Nephrology(環境に配慮した腎臓病学)」が推進されてきた.また,このGreen Nephrologyは主に医療従事者による活動であるが,医療を支える環境学者,工学者,企業,医療を受ける国民や為政者といった多角的な協力体制の構築が望まれる.さらに,水の再利用としての腎不全治療に用いられた窒素と電解質とを含む透析排液の活用も考えられ,塩性植物の栽培など乾燥地農学研究に関わる研究者の参画も必要となってくるであろう.これらのGreen Nephrologyが豪州や本邦のみならず全世界に広がることで,医療が与える環境負荷が低減され,ひいては,健康の維持へ貢献できると考えられる.

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© 2021 日本沙漠学会
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