医療情報学
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シンポジウム2000参加論文
病院と地域の患者情報共有における倫理的問題とその解決策についての考察
太田 勝正八尋 道子小西 恵美子
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2000 年 20 巻 2 号 p. 169-172

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抄録

 在宅ケアの普及に伴い,入院中の患者情報の地域施設等との共有が求められている.これは,退院サマリーとして,すでに多くの病院で実施されている.看護職を対象とした質問紙調査の結果は,よりよい在宅ケアのために退院サマリーを送付することに賛成の意見が多かった.しかし,病院から地域へのケアの継続が,システムとして必ずしも確立していない現状において,入院中の治療やケアに関する詳細な情報を,患者の了解を得ずに送ることに対して,患者のプライバシーや患者の自己決定権等の観点から問題を指摘する声があった.この倫理的問題に対して,どのように対応すべきかを検討した結果,医療者としての基本的な責務である秘密の保持,患者の利益のために最善を尽くすことを前提とすれば,不必要に患者情報の共有をためらう必要はないと考えられた.ただし,看護職は患者情報の秘密保持,プライバシーの意味をもう一度振り返るとともに,患者情報の共有が患者の利益なることをもっと積極的に患者や家族に示していく必要があると考える.

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© 2000 一般社団法人 日本医療情報学会
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