医療情報学
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服薬指示・実施システムのデータによる投薬プロセスの分析
笠井 暁史横田 慎一郎野口 貴史井田 有亮北川 陽一郎今井 健河添 悦昌田中 勝弥大江 和彦
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2017 年 37 巻 4 号 p. 187-196

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抄録

 投薬に関連する情報分析は,一般に収集可能な処方オーダの履歴情報が利用されてきた.東京大学医学部附属病院は,入院患者を対象に投薬のプロセスに着眼した服薬指示・実施システムを運用し,処方や指示の誤読・誤解や伝達ミスが減少する成果が得られている.今回,このシステムの履歴情報を分析し,投薬プロセスの現状と課題を明らかにしたので報告する.

 1週間の対象期間中の入院患者は5,004人日で,31,138件の処方,32,370件の服薬指示,51,385件の服薬実施に関する情報を分析した.服薬指示薬の28%は持参薬であり,30%は入院患者自身が管理していた.残薬数情報の30%は不正確であった.院内処方薬の14.1%は処方オーダ通りに服薬は実施されておらず,実施された服薬の26.9%は処方オーダ履歴から把握できなかった.このような不一致が生じた薬剤は下剤,抗凝固薬が多く,不一致の原因は,医学的要因,業務上の要因,誤りによる要因などに分類された.

 服薬指示・実施システムの運用により,処方オーダのみの分析では不可能であった投薬プロセスに沿った情報分析が可能となった.

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© 2017 一般社団法人 日本医療情報学会
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