日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G5-09
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G5:初期地球と隕石
衝撃を受けたL6-コンドライト中に見られる高圧鉱物
*木村 有希子大谷 栄治久保 友明近藤  忠木村  眞高田 淑子 
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抄録
1.研究背景と目的
 隕石は、もともと宇宙空間で起きた天体間衝突の結果生じた破片であると考えられている。よって、隕石には天体間衝突の痕跡が残されているはずであり、その痕跡の1つと考えられるのが高圧鉱物の存在である。隕石中の高圧鉱物はいくつか種類があり、それぞれが固有の温度圧力条件を経験しないと形成されない。このことから、隕石中に存在する高圧鉱物の種類を調べる事により、隕石が経験した温度圧力条件を推定する事ができる。また、高圧鉱物の組織(成長距離)から、その温度圧力条件の継続時間を推定する事ができる。
 本研究では、2種類の南極隕石、Y791384とALH78003に見られる高圧鉱物の、種類や組織(成長距離)を調べることによって、これらの隕石が経験した温度圧力条件とその継続時間を推定することを目的としている。

2.方法
 分析には隕石の薄片を用いた。鉱物同定には顕微ラマン分光装置を、組成分析にはEPMAを、組織観察には走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた。

3.結果と考察
 得られた鉱物同定結果と、同様の鉱物構成を持つAllende 隕石の相図とを比較することにより、各隕石が経験したと考えられる温度圧力条件を推定した。その結果、Y791384は約20GPa、2000℃以上の、ALH78003は約17GPa、2000℃以上の高温高圧条件を経験していることが明らかになった。
 また、成長距離がわかりやすい一種類の高圧鉱物(リングウッダイト)に着目して組織観察を行い、Y791384が経験した高圧(約20GPa)状態の継続時間を推定した。その際、鉱物の成長速度と温度に関する計算や、固体中の熱伝導の計算を行った。その結果、Y791384は少なくとも数秒以上、高圧状態を経験した可能性があることが明らかになった。
 以上の結果から、さらに、Y791384の母天体が経験したと考えられる衝突の規模を推定する。宇宙空間で天体同士が衝突すると、天体内部で高温高圧状態が一定時間生じる。その温度圧力は天体の衝突速度に、高温高圧状態の継続時間は天体サイズに、それぞれ依存する。そこで、隕石が経験した温度圧力条件とその継続時間がわかれば、その隕石の母天体が経験した衝突規模(速度とサイズ)を制限できる可能性が考えられる。天体間衝突は太陽系で普遍的な現象であり、この現象によって地球を含む惑星も形成されたと考えられている。このような点から、天体間衝突の規模を制限することは重要である。
 今回の観察結果得られた温度圧力条件と継続時間から、天体衝突規模の推定を行う予定である。
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© 2003 日本鉱物科学会
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