日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: G6-01
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G6:深成岩及び変成岩
山梨県 南部町 佐野川  はんれい岩
*金 容義木村 卓哉菅野 智之
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抄録
佐野川gabbbro massは、南部フォッサマグナ地域に、最大1.5km×2kmの十島岩体、および3つの少岩体(下野・西沢・柿元)が、分布している。佐野川沿いにNNW–SSE方向 2km、長さ20kmの範囲に、深部断裂に沿って併入した岩体である。岩体に伴う安山岩–玄武岩脈において、久野(1957)により、A2O3の高い、含クロム透輝石が晶出することが明らかにされている。晶出時に、異常な条件であることが検討されていた。岩体は、微閃緑岩から微花崗閃緑岩、そして花崗斑岩(グラノファイヤ)などにより主に構成されている。岩体は、新第三紀中新世、富士川層群(松田、1961;富士川団研グループ、1976)の礫岩及び砂岩・頁岩互層に貫入している。砂岩に黒雲母などを変成鉱物として晶出している。岩体について、矢島(1959、1970)、相馬・吉田(1963)の報告がある。Gabbro岩相について、解釈は異なる。相馬・吉田(1963)では、石英閃緑岩・閃緑岩の岩体中心部に、しそ輝石はんれい岩・輝石はんれい岩・角閃石はんれい岩相が、幅500m長さ2kmの規模での分布を示し、深成岩相として解釈している。主に下野・柿元岩体など。矢島・加藤(1980)では、はんれい岩–閃緑岩として4岩体(下野・西沢・柿元・十島)を区分し、安山岩–玄武岩岩脈の貫入を報告している。Gabbroは、安山岩–玄武岩岩脈に、数cm大から数10cmの規模でゼノリス状に分布している。また、ペグマタイト状に輝石の巨晶をも含む。4つの岩体の、北端と南端の安山岩–玄武岩岩脈に含まれる。とくに北端での形成が大であり、紅砒ニッケル鉱などを伴う。幅5mm大の脈状を呈したり、3cm大でgabbroに含まれている。またゼノリス状で含む岩脈と共に、クロム透輝石を含む玄武岩–安山岩岩脈が形成する。砂岩・頁岩互層に貫入し、脈幅は3mである。クロム透輝石は最大2cm大であり、角閃石の微晶を含んでいる。従来Gabbro岩相として解釈してきた深成岩相は、主に安山岩–玄武岩岩脈にゼノリス状に取り込まれている岩相である。佐野川岩体の主岩相は、微閃緑岩–微花崗閃緑岩や花崗斑岩(グラノファイヤ)である。なお細粒なgabbroをも含む。丹沢山地の第3紀花崗岩などに類似して、岩相変化が著しい。とくに中央部に位置する柿元岩体では、数十cmの幅で微閃緑岩から花崗斑岩に漸移する。十島岩体および、さらに南部地域(富士川沿い)では、花崗斑岩(グラノファイヤ)・安山岩岩脈が多く分布する。フォッサ・マグナ方向に伴い(NS走向 70–80E傾斜)、砂岩・頁岩互層に10数m幅の岩床状に、併入している。緑泥石などの変質鉱物を多く伴い淡緑灰色を呈する。岩体は、カルク・アルカリ岩系(Yajima,1970)を呈している。周辺域に分布している藤代岩体(安倍川–藤代川–地蔵峠)・相又岩体(富士川–相又川)の化学組成との検討では、類似した値を示し、ソレアイト岩系からカルクアルカリ岩系へ移行していく(岡野、1999)。いずれもH2O(+)の多い値を示す。角閃石や黒雲母が、緑泥石などの変質鉱物に置きかえられているためである。安山岩や微閃緑岩が不安定であり、微はんれい岩は安定である。また分化傾向も詳細にみると、相又岩体はカルクアルカリ岩系を、藤代岩体はソレアイト岩に近く、佐野川岩体は中間型をしめす(岡野、1999)。ただ巨視的には丹沢型に類似している。岩体は、フォッサ・マグナの構造運動を著しく受けて形成した事は従来の解釈と差異はない。しかし岩体の北端で岩脈にゼノリス状に含まれる紅砒ニッケル鉱やgabbro,そしてクロム透輝石に含まれる角閃石の微晶。そして南端での変質鉱物を多く含む安山岩の岩床は、深部断裂の規模の巨大さと水の存在を特徴づける。
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© 2003 日本鉱物科学会
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