抄録
地形の定量化は地形学において重要なものであり、古くから研究されてきている。Troeh(1965)は傾斜地の形状を2次曲面式で近似し、2次曲面のパラメータによって傾斜の形状や土壌型を決定した。近年の計算機の発展に伴い、地形解析ではディジタル標高モデル(digital elevation model ; DEM)が用いられるようになり、地形の定量化においてDEMから作成した傾斜角、傾斜方位角、曲率が重要な役割を果たしている(Evan, I.S., 1980)。地形は一般に山地、丘陵、台地、低地の4つの典型地形に分類されるが、現在それぞれの地形特徴について明確に定量化されてはいない。Pike(1988)は、DEMからの各地点の傾斜角、傾斜変換角、曲率を用いて地形の険しさ度合によって地形を7段階に分類しているが、この分類により山地や丘陵といった分類まで発展させることは難しい。そこで、本研究では、各典型地形について定量化を行い、計算機による広域の地形分類図の作成を試みた。尚、より詳細な地形解析のために、本研究での典型地形の分類種目を山地、火山、丘陵、扇状地、平地とするが、山地は険しさの度合によってさらに3つに区分した。 本研究では、計算機による典型地形の自動分類を行うために、国土地理院発行の50mメッシュDEMから傾斜角、計算距離150mと5kmの地上開度および地下開度図を計算し図化した。それらのデータをもとに、包含データおよびトレーニングデータの作成と典型地形の特徴量の抽出を行い、その特徴量をもとにマハラノビス汎距離による典型地形自動分類を行った。まず、包含データを作成するためには、斜度図と開度図から、各地点における3km×3km包含内の斜度および開度の平均と標準偏差を計算した。包含の広さを3km×3kmにしたのは、その範囲内であれば、各典型地形が十分に識別できるからである。次に、作成した包含データから各典型地形のトレーニングデータを作成する。ここで、トレーニングデータは各典型地形を明確に表している地点として選定した。最後に、選定したトレーニングデータから各典型地形を調査し、その特徴量を抽出した。 上述のように、斜度、地上開度図、地下開度図のそれぞれの平均および標準偏差から典型地形の特徴量を抽出したが、どの組み合わせのデータが最も典型地形を明確に識別できるものであるかを選定する必要がある。本研究では、まずそれらのデータから分離度を求めた。2つのデータの組み合わせならば、2次元分布図を用いて分離度を観察できるが、3つ以上のデータの組み合わせについてはJeffries-Matusitaによる分離度の計算式を採用した。2つのデータの組み合わせから、斜度の平均と計算距離150mの地下開度平均の組み合わせが最も分離度が高いことが判明した。さらに4つのデータの組み合わせの場合は、斜度の平均、斜度の標準偏差、計算距離5kmの地上開度の平均、計算距離150mの地下開度の平均が最も分離度が高いことが判明した。 本研究では、上記の最適な組み合わせのデータから、東北全域に対して典型地形の自動分類を行った。トレーニングデータにおける正判別率が80%以上に達しているため、本研究における典型地形自動判別が有効であるといえる。また、視覚的評価についてもよい結果が得られた。