日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
2003年度 日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会
セッションID: C-16
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C:岩石・鉱物・鉱床学一般
Co-S系の金属に富む部分の相関係(700℃以上)、とくにCo4S3相の再検討
*北風 嵐苣木 浅彦
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抄録
700から1200Cの温度で、Co-S系中Co4S3、Co9S8及びCo1-xSを含む、35から55原子%Sの組成範囲における相関係を、封入石英ガラス管法を用いて再検討した。合成物は顕微鏡、高温X線回折、DTA及びEPMAで調べた。本研究でαCo, 高温固溶体(SS)Co4+xS3-Co9-yS8),Co ペントランド鉱Co9S8)、Co monosulfide(Co1-xS), カッティエ鉱(CoS2)及び液相が生じた。<BR> Co ペントランド鉱は831C以下で安定であり、この温度以上で高温相に転移する。この転移は可逆的である。831C以上の温度の高温ではCo4S3組成と固溶体(SS)を形成する。本研究ではこの固溶体を仮に高温SSと称する。この高温SSは806-930Cで、Co4S3とCo9S8を含み,最大40.8(876C)から49.2(829C)原子%Sまでの組成範囲を有し、相図上葉状の領域を占めている。これは液相、αCo、Co ペントランド鉱及びCo monosulfideと共存するが、930C、46.5原子%S(ペリテクチック)で液相とCo monosulfideに分解溶融する。このSSは安定下限として、829C、49.2原子%S(Sに富むユーテクトイド)でCo ペントランド鉱とCo monosulfideに、また806C、42.9原子%S(Coに富むユーテクトイド)でαCo及びCo ペントランド鉱に分解する。この高温SSは急冷してもクエンチできない。 Co ペントランド鉱は800Cで、46.4-47.1原子%S範囲の狭いSS領域を有するが、700°Cあるいはそれ以下では化学量論組成Co9S8に収斂する。それは高温SS(Co9S8)の転移によってつくられるが、このほか高温SS及びCo monosulfideからの離溶や上記の両ユーテクトイドでこの高温SSの分解によっても現れる。この相は急冷によりクエンチできる。 Co monosulfideは、1000°Cで50.0-53.0 原子%S、700°Cで51.7-53.8原子%Sの組成範囲を有するSSとして現れ、液相、高温SS、Co ペントランド鉱及びカッティエ鉱と共存する。 またそれは1176C、51.8原子%Sで一致溶融する。
高温SSは単純立方格子に属し、Co4S3とCo9S8組成の格子定数は850°Cでそれぞれa=5.183及び5.175Aで、また875Cではa=5.178及び 5.171Aである。後者の値はCo ペントランド鉱(低温型)a=9.9287A(室温)のおよそ半分に相当する。このことから、この転移は超格子(低温型)から基本格子への秩序-無秩序型と考えられる。これはまたペントランド鉱の転移によく似ている。850°Cでの高温SSの組成と格子定数との関係は、組成42-49原子%Sの範囲で、S含量の増加に従い、a=5.180から5.167Aまで直線的に減少する。また875°Cでのa値はやや大きくなるが、組成との関係は上記の直線と平行である。
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© 2003 日本鉱物科学会
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