抄録
珪藻土や沸石(モルデン沸石)は,共に多孔質であり,比表面積が大きいという特徴を持っている.珪藻土の場合,この表面にはシラノール基として無数の水素が結合しており(比表面積64m2/g),沸石の場合は,沸石水の形で多量の水素を含んでいる.水素原子は,放射線の中で非常に透過力が高い中性子線に対して,優れた遮蔽能を持つことで知られており,これらのことは,両岩石が高性能中性子遮蔽材の基礎素材として極めて有望であることを示唆している.
今回,秋田県男鹿半島から採取した珪藻土と山形県板谷から採取したモルデン沸石に対して,カリフォルニウム(252Cf)線源から中性子を照射し,遮蔽実験を行った.その結果,珪藻土原石のみかけ比重(約1.24)は普通コンクリート(約2.36)のほぼ半分であるにも拘らず,高速中性子に対しては,同等の遮蔽性能を示すことが明らかになった.また,モルデン沸石にも同様の中性子遮蔽能力があることが確認された.