2014 年 63 巻 2 号 p. 168-172
食品媒介感染症であるCampylobacter jejuniおよびC. coliは馬尿酸塩加水分解試験により鑑別することができる.この方法は特別な機材や試薬を必要とせず,2時間強で結果が得られるため,医療施設での迅速簡易試験として有用である.しかし試験の判定は反応液の色を目視で判定し,濃紫色を陽性,薄紫色~無色を陰性とする.また使用菌量も漠然としており具体的ではなく,施設や実施者によって判定に相違が生じる可能性があった.そこでPCRにより遺伝子検索済みの下痢症患者由来C. jejuni 72株,C. coli 28株を対象として,馬尿酸塩加水分解試験に用いる接種菌濃度別の検査結果について検討した.使用菌量はMcFarland No. 0.5~5とし,試験反応液を540 nmにて吸光度測定した.その結果,接種菌量不足では偽陰性を,また過度な接種菌量では偽陽性を呈する可能性が示唆された.これらの検討結果より,McFarland No. 2の菌液を用いることで最小限の接種菌量でなおかつ偽陰性を見逃すことなく目視判定が可能となった.