抄録
尿中に腫瘍細胞が出現した後天性嚢胞性腎疾患acquired cystic disease of the kidney(ACDK)関連腎細胞癌の1例を経験したので,その形態学的・免疫細胞化学的所見について報告する.症例は30歳代,男性.IgA腎症による腎機能不全のため血液透析を受けていた.血液透析開始11年後にMRIで腎細胞癌を疑われ,尿細胞診が施行された.尿細胞診では大型核小体と泡沫状細胞質を有する類円形の異型細胞が出現していた.その後,両側の腎臓摘出術が実施され,摘出材料による病理組織学的検討により,両側性のACDK関連腎細胞癌と診断された.長期透析を受けている患者の尿中に,大型核小体と泡沫状細胞質を有する類円形の異型細胞が出現した場合にはACDK関連腎細胞癌の可能性を考慮する必要がある.