医学検査
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技術論文
5種類のcarbohydrate antigen 19-9測定試薬による相関及び膵臓がん診断能評価
菊地 良介度會 理佳鈴木 敦夫横山 覚後藤 香緒里安藤 善孝松下 正
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2020 年 69 巻 2 号 p. 184-192

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抄録

今回我々は,当院検査部でcarbohydrate antigen 19-9(CA19-9)を測定した162例の検査後残検体を対象とし,5種類のCA19-9測定試薬による測定値の相関と膵臓がん診断能の比較を行った。5種類のCA19-9測定試薬は,ルミパルスプレストCA19-9試薬キット,アーキテクトCA19-9XR・アボット,エクルーシス試薬CA19-9 II,HISCL CA19-9 II試薬,ビトロスCA19-9試薬パックを使用した。管理試料及びプール血清を用いた併行精度の結果から,アーキテクト試薬を除き変動係数(coefficient of variation; CV)0.5~4.3%と良好な再現性が確認できた。アーキテクト試薬ではCV 3.7~21.8%と再現性において分散が認められた。各CA19-9測定試薬間のCA19-9相関性評価では,コバス試薬とビトロス試薬の相関係数が最も良好であったが,ビトロス試薬はコバス試薬の測定値より2倍程度大きくなる傾向が認められた。さらに,CA19-9のカットオフ値付近での相関性評価から,アーキテクト試薬のCA19-9測定値は他4試薬と比較して乖離が大きいことが確認された。また,non NS19-9抗体を使用しているHISCL試薬のCA19-9測定値は,NS19-9抗体を使用している他4試薬と比較して乖離が確認された。一方で,receiver operating characteristics(ROC)解析によるCA19-9の膵臓がん診断能は,すべての試薬でROC曲線下面積0.739以上と比較的良好な結果が得られた。以上の結果より,5種類のCA19-9測定試薬に互換性は認められないものの,膵臓がんの診断能はほぼ同等であることが明らかとなった。

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© 2020 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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