呼気一酸化窒素(FENO)値は以前よりさまざまな変動因子があるといわれているが,本邦において季節性変動などの環境因子を検討した報告は少なく,気管支喘息(以下,喘息)の病態把握に有用なバイオマーカーとしてのFENO値に影響を及ぼす患者背景について調べた。当院の入院および外来患者を対象に,2017年3月1日~2018年2月28日までにFENO測定を実施した396件の結果について,喫煙歴,性別,年齢さらには上位の3疾患群を後ろ向きに調査した。なお,測定機器はNIOX MINOを使用した。年齢と喫煙比較では,50~60歳代の男性が高く,非喫煙者より喫煙者のFENO値が高値を示した。季節を3~5月(春),6~8月(夏),9~11月(秋),12~2月(冬)と四半期毎に分類した場合,春と冬の2群で比較すると有意差を認め,冬より春のFENO値が高値であった。疾患別比較において,喘息,喘息及びアレルギー性鼻炎(以下,喘息 + アレルギー),喘息及び慢性閉塞性肺疾患(以下,喘息 + COPD)を併発している患者(喘息とCOPDオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap)を含む)のFENO値は春に高値となり,有意差を認めた。当院の検証においても春先にFENO値の変動を認め,海外の報告と一致する結果となった。今回の調査では,気道の炎症が季節性の増悪か花粉等の環境因子かは明確にはならなかったが,季節によってFENO値の上昇は充分考慮する結果であり,その背景には一部の喘息 + COPD患者の増悪が大きく影響していると考えられた。