医学検査
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69 巻 , 4 号
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原著
  • 菅原 眞由美, 九十九 昭恵, 宮下 奈都美, 近藤 綾美
    原稿種別: 原著
    2020 年 69 巻 4 号 p. 507-515
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    昨今の浸潤性乳癌は遺伝子発現プロファイリングに基づくintrinsic subtype分類による治療が重視されているが,全症例で行うことは困難であることから病理組織を使った免疫組織化学染色結果で決定する代替的intrinsic subtype分類(サブタイプ分類)が使われている。そのため細胞診検査は減少傾向にあるが,低コスト・低侵襲で報告も早くできる利点があることから,サブタイプ分類間での細胞像を比較し細胞診の役割について検討を行った。対象は針生検にて浸潤性乳癌と診断された検体のうち,針生検時に捺印標本作製が可能であった97件とした。検討項目は核の大きさ・N/C比・核形不整・クロマチンの性状・クロマチンの濃さ・核の大小不同・腺管形成の有無の7項目とし,各々1,2あるいは1~3とスコア化し使用した結果,7項目のスコアの合計が8より低く核異型の弱い細胞からなる浸潤性乳癌はluminal A-likeの可能性が極めて高く,スコアの合計が13以上で核異型の強い細胞からなる浸潤性乳癌はluminal B-like(HER2 positive),HER2 enriched,triple negativeのいずれかの可能性が高いこともわかった。以上より細胞像からサブタイプ分類推定が可能なものがあり,細胞診は予後予測や治療決定など臨床的アプローチの一助となると考えられる。

  • 戸田 圭三, 野村 永, 染谷 香代子
    原稿種別: 原著
    2020 年 69 巻 4 号 p. 516-526
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    分子生物学的手法の普及によりMycobacteriumは5属に再編成され,菌種も188種以上に増加した。そのため,従来の遺伝子検査やフェノタイプ検査では,非結核性抗酸菌の同定が困難になっている。そこで,ハウスキーピング遺伝子の一つであるsecA1遺伝子を用いた,系統樹解析やBLAST解析で同定を試みた。その結果,DDH法や16S rRNA遺伝子では同定困難であったM. abscessusM. aviumM. fortuitumM. lentiflavumM. mageritenseM. marseillenseM. ulceransの同定が可能であった。secA1遺伝子はM. intracellulareなどの鑑別に課題は残るが,GenBankに登録された基準・標準株が増加したことにより,非結核性抗酸菌の同定ツールとしての有用性が増した。

  • 福田 雅子, 中森 正博, 今村 栄次, 小川 加菜美, 西野 真佐美, 平田 明子, 若林 伸一
    原稿種別: 原著
    2020 年 69 巻 4 号 p. 527-533
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    認知症診療において臨床検査技師も積極的に神経心理学的検査を行うようになっている。その中に,軽度認知障害(mild cognitive impairment; MCI)の評価スケールとして開発された日本語版Montoreal Cognitive Assessment(MoCA-J)がある。今回,MoCA-Jの特性を検証するため,当院外来でMoCA-Jを施行した患者75名を対象とし,リスク因子との関連を頭部MRI所見を含めて後方視的に解析した。また認知症疾患ごとにMoCA-Jサブスコアでの検討を行った。平均年齢74.6 ± 9.1歳,MoCA-J中央値21(最小値8,最大値30)であった。認知機能正常者においてMoCA-Jと関連する因子の多変量解析を行ったところ,脳室周囲高信号域(periventricular hyperintensity; PVH)は有意に独立した相関因子であった。疾患毎のMoCA-Jサブスコアの比較を行ったところ,血管性認知症では注意・遂行において正答率の低値が認められた。また,記憶の正答率は認知機能正常者も含めてすべての群で低かったが,認知機能正常者,MCI,認知症の順で 顕著に低下していた。MoCA-Jは特に前頭葉機能を反映する注意・遂行の配点が高いことが特徴である。その点を踏まえて脳画像所見との比較や認知機能低下の鑑別に活用する意義は大きいと考えられた。

  • 上西 珠実, 今長 京子, 土田 麗央奈, 佐々木 達彦, 玉舍 学, 吉田 志緒美, 樋口 冨士夫
    原稿種別: 原著
    2020 年 69 巻 4 号 p. 534-538
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    呼気一酸化窒素(FENO)値は以前よりさまざまな変動因子があるといわれているが,本邦において季節性変動などの環境因子を検討した報告は少なく,気管支喘息(以下,喘息)の病態把握に有用なバイオマーカーとしてのFENO値に影響を及ぼす患者背景について調べた。当院の入院および外来患者を対象に,2017年3月1日~2018年2月28日までにFENO測定を実施した396件の結果について,喫煙歴,性別,年齢さらには上位の3疾患群を後ろ向きに調査した。なお,測定機器はNIOX MINOを使用した。年齢と喫煙比較では,50~60歳代の男性が高く,非喫煙者より喫煙者のFENO値が高値を示した。季節を3~5月(春),6~8月(夏),9~11月(秋),12~2月(冬)と四半期毎に分類した場合,春と冬の2群で比較すると有意差を認め,冬より春のFENO値が高値であった。疾患別比較において,喘息,喘息及びアレルギー性鼻炎(以下,喘息 + アレルギー),喘息及び慢性閉塞性肺疾患(以下,喘息 + COPD)を併発している患者(喘息とCOPDオーバーラップ(Asthma and COPD Overlap)を含む)のFENO値は春に高値となり,有意差を認めた。当院の検証においても春先にFENO値の変動を認め,海外の報告と一致する結果となった。今回の調査では,気道の炎症が季節性の増悪か花粉等の環境因子かは明確にはならなかったが,季節によってFENO値の上昇は充分考慮する結果であり,その背景には一部の喘息 + COPD患者の増悪が大きく影響していると考えられた。

  • 岡村 優樹, 梅橋 功征, 宮﨑 いずみ, 波野 真伍, 宮﨑 明信, 古野 浩
    原稿種別: 原著
    2020 年 69 巻 4 号 p. 539-545
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    背景:肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism; PTE)と深部静脈血栓症(deep vein thrombosis; DVT)は一連の病態であり,静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism; VTE)と総称される。D-dimerと血栓検出部位および血栓性状,PTE発症との関連は報告が少ない。本研究はVTE患者での下肢静脈超音波検査の血栓検出部位および血栓性状,PTE発症とD-dimerの関連について研究した。方法,結果:対象はVTE患者66名(平均年齢71.1 ± 14.6歳,男性31名,女性35名),D-dimerの中央値は8.78 μg/mLであった。D-dimerは血栓検出部位で中枢型は末梢型より有意に高く(12.40 μg/mL vs 4.59 μg/mL, p < 0.01),血栓性状で新鮮血栓は器質化血栓より有意に高かった(13.74 μg/mL vs 4.74 μg/mL, p < 0.01)。ROC解析による新鮮血栓と器質化血栓のD-dimerの最適カットオフ値は8.04 μg/mL,陽性的中率83.3%であった。PTE発症群のD-dimerは非発症群と比較して有意に高く(p = 0.01),PTE発症群と非発症群のD-dimerの最適カットオフ値は8.07 μg/mLであった。結論:VTE患者のD-dimer高値は中枢型かつ新鮮血栓の可能性が高く,PTE発症の可能性が高いことが示唆された。

  • 菊地 良介, 金 貞姫, 鈴木 敦夫, 度會 理佳, 横山 覚, 齋藤 尚二, 八木 哲也, 松下 正
    原稿種別: 原著
    2020 年 69 巻 4 号 p. 546-553
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)の補助診断法として血清学的診断法が期待されている。抗SARS-CoV-2抗体試薬は,SARS-CoV-2のspike protein S1 domain(S)とnucleocapsid protein(N)に対する抗体を検出する2種類に大別される。今回我々は,COVID-19と診断された症例の経時的試料を用いて,SとN抗原を用いた抗SARS-CoV-2抗体試薬の検証を行った。S抗原を用いた抗SARS-CoV-2抗体試薬は,EUROIMMUN S-IgA,IgG試薬とVITROS S-total,IgG試薬を使用した。N抗原を用いた抗SARS-CoV-2抗体試薬は,ARCHITECT N-試薬とcobas N-試薬を使用した。その結果,来院時点(第X病日)からEUROIMMUN S-IgA試薬によるIgA抗体は陽性であった。第X + 5病日よりVITROS S-total試薬による抗SARS-CoV-2抗体は陽性となり,第X + 8病日よりARCHITECT N-試薬によるIgG抗体は陽性であった。本症例において,S抗原を用いた抗SARS-CoV-2抗体試薬は早期より抗SARS-CoV-2抗体が陽転化した。特に,抗SARS-CoV-2 S-IgA抗体はCOVID-19の早期補助診断に有用な可能性が示唆された。

  • 金 貞姫, 菊地 良介, 鈴木 敦夫, 度會 理佳, 横山 覚, 森瀬 昌宏, 八木 哲也, 松下 正
    原稿種別: 原著
    2020 年 69 巻 4 号 p. 554-561
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    新型コロナウイルス感染症に対する抗体検査試薬は,SARS-CoV-2のnucleocapsid protein(N)あるいはspike protein S1 domain(S)を抗原として用いた2種類に大別される。本研究では,抗SARS-CoV-2抗体検査について,5社7種類のイムノクロマト法キットと3社4種類の自動分析装置用試薬による比較検討を行った。対象のイムノクロマト法キットとして,Kurabo社,RayBiotech社,Innovita Biological Technology社,LumiQuick Diagnostics社およびLepu Medical Technology社のキットを使用した。自動分析装置用試薬はAbbot社,Roche Diagnostics社,Ortho-Clinical Diagnostics社の測定試薬を用いた。対象試料には,COVID-19と診断された患者2例の検査後残血清を使用した。その結果,N 蛋白を抗原とした抗SARS-CoV-2抗体検査試薬ではIgG抗体はIgM抗体に比して早期に陽性を示し,S 蛋白を抗原とした抗SARS-CoV-2抗体検査試薬はIgM,IgG抗体両方が感染早期より検出可能であった。以上より,COVID-19のスクリーニング検査としてはS蛋白を標的とした抗SARS-CoV-2抗体検査試薬が有用である可能性が示唆された。

技術論文
  • 富安 聡, 大塚 百華, 四丸 知弥, 澁田 樹, 宿谷 賢一, 大田 喜孝, 三宅 康之, 佐藤 信也
    原稿種別: 技術論文
    2020 年 69 巻 4 号 p. 562-569
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    背景・目的:病理診断において,マッソン・トリクローム(Masson trichrome; MT)染色は重要な染色法の一つである。しかし,MT染色は工程が多く煩雑であり,1時間程度の時間を要する。今回,MT染色における迅速法を検討したので報告する。方法:色素の調合およびマイクロウェーブ(microwave; MW)による時間短縮効果の検討と染色工程の簡略化を図り,従来法と染色結果を比較した。結果:鉄ヘマトキシリン:1分,オレンジG・酸性フクシン混合液:1分,リンタングステン酸:MW 10秒照射,アニリン青:MW 10秒照射後,腎臓は3分,肝臓は7分で,従来法と同等で良好な染色結果を得ることができた。さらに,染色工程の簡略化として第1媒染剤,1%塩酸アルコールによる分別,第2媒染剤,1%酢酸水による洗浄の工程を省略した結果,染色性の低下は認められなかった。考察:MT染色において,染色工程の時間短縮と簡略化を実現できた。これは,現在報告されているMT染色の中では最短時間である。迅速化の要因は,細胞質染色における分子間の競合をなくしたこと,MWによるリンタングステン酸の媒染効果促進によるものと考えられる。したがって,この迅速法は従来法と同等の染色結果を得ることができ,臨床の現場において推奨できる方法と考える。

  • 藤本 丈志, 城田 正則, 秋山 功, 坪井 五三美, 星野 忠
    原稿種別: 技術論文
    2020 年 69 巻 4 号 p. 570-576
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
    ジャーナル フリー HTML

    乳酸脱水素酵素(LD)活性測定は2020年4月1日よりJSCC法からIFCC法に変更される。そこで,LタイプワコーLD・IF試薬(富士フイルム和光純薬)を用いたLD活性測定の基礎的検討を行った。併行精度及び再現精度は,いずれの管理試料においても変動係数C.V.は1.2%以下と良好であった。LD高値活性検体を用いて10段階の希釈直線性試験を行ったところ,2,470 U/Lまで測定可能であった。干渉物質はビリルビンF,ビリルビンCおよび乳ビは測定値に影響を認めなかったが,ヘモグロビンは正誤差を受けた。現行試薬との相関は,相関係数r = 0.994と良好で,回帰式はy = 0.923x + 9.8と現行試薬とほぼ同等な成績が得られた。一方,回帰直線よりも低値に乖離したと考えられた5検体に関して,クイックジェルLD試薬(ヘレナ研究所)を用いたLDアイソザイム分析結果はLD5分画値が59%以上とMサブユニット優位な検体であった。健常者におけるLD活性値の基準範囲は108~202 U/Lと算出された。LタイプワコーLD・IF試薬は日常の臨床検査に十分な性能を有していた。

  • 藤本 丈志, 城田 正則, 秋山 功, 坪井 五三美, 星野 忠
    原稿種別: 技術論文
    2020 年 69 巻 4 号 p. 577-583
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
    ジャーナル フリー HTML

    アルカリホスファターゼ(ALP)活性測定は2020年4月1日よりJSCC法からIFCC法に変更される。そこで,LタイプワコーALP・IFCC試薬(富士フイルム和光純薬)を用いたALP活性測定の基礎的検討を行った。併行精度および再現精度はいずれの管理試料においても変動係数C.V.は1.4%以下と良好であった。ALP高値活性検体を用いて10段階の希釈直線性試験を行ったところ,762 U/Lまで測定可能であった。干渉物質はビリルビンF,ビリルビンC,乳ビおよびヘモグロビンは測定値に影響を認めなかった。現行試薬との相関において相関係数はr = 0.990と良好であったが,IFCC試薬のALP活性値は現行試薬の約1/3程度低値であった(回帰式:y = 0.344x + 0.58)。一方,回帰直線よりも低値に乖離したと考えられた7検体について,クイックジェルALP試薬(ヘレナ研究所)を用いたALPアイソザイム分析結果はALP5分画値が57%以上と小腸型ALP優位な検体であった。健常者におけるALP活性値の基準範囲は34~106 U/Lと算出された。LタイプワコーALP・IFCC試薬は日常の臨床検査に十分な性能を有していた。

  • 山口 俊, 梅橋 功征, 波野 真伍, 宮﨑 いずみ, 原田 美里, 古野 浩
    原稿種別: 技術論文
    2020 年 69 巻 4 号 p. 584-589
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    インフルエンザウイルス感染症の診断方法として目視判定による迅速診断キットが広く普及しているが,感染初期の偽陰性や人為的ミス等による誤差判定が発生している。本研究では,当院でインフルエンザ迅速検査として新規導入した機器判定の移動式免疫蛍光分析装置スポットケムFLORA SF-5520(スポットケムFLORA),専用試薬のスポットケムFLORA FluABと目視判定を比較し検査室での機器判定の有用性について検討した。当院に所属する17名(平均年齢:33 ± 16歳)の臨床検査技師を対象に実施した。不活化インフルエンザウイルスを用いて,各希釈系列を調整し,検出感度と結果判定のばらつき及び結果に対する自信の有無について比較した。さらに,使用感アンケートを実施した。検出感度はイムノエース16倍,スポットケムFLORAは64倍だった。結果判定のばらつき及び結果に対する自信の有無について比較したところ,スポットケムFLORAは判定に統一性があったのに対し,イムノエースは16倍希釈検体での陽性判定率はA型で23.5%(4/17名),B型では64.7%(11/17名)でばらつきが認められた。使用感アンケートによりスポットケムFLORAは,入力ミスの軽減,オンライン運用の導入で他業務との並行実施,検査の高感度化や判定基準の統一等のメリットが確認された。

  • 濃野 ありさ, 穴井 里恵, 森山 研介, 亀山 有加
    原稿種別: 技術論文
    2020 年 69 巻 4 号 p. 590-595
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    当院における褥瘡の評価はDESIGN-Rを利用している。今回DESIGN-Rでの評価に加えて,エコーとサーモグラフィーが褥瘡の評価に有用であるかを検証した。文献を参考にエコースコアを独自に考案した。褥瘡が認められる患者に1週間ごとにエコーとサーモグラフィーを実施し,褥瘡サイズを基準としてDESIGN-Rスコアおよびエコースコアの経時的変化を比較して検証した。褥瘡サイズとDESIGN-Rスコアの経時的変化が一致したのは11例中6例,褥瘡サイズとエコースコアの経時的変化が一致したのは11例中8例であった。サーモグラフィーでは正常部位と比べて褥瘡部位で温度が高くなっていたものが4例,低くなっていたものは7例であった。褥瘡サイズとエコースコアが乖離した例では,エコーの設定条件が統一されていなかったことがスコアリングに影響したと思われた。サーモグラフィーは炎症の有無を客観的に評価できていると考えられた。以上により,DESIGN-Rでの褥瘡の評価法に加えて,エコーとサーモグラフィーは褥瘡の経過を評価するために有用であると考えられた。

  • 上森 南美, 黒川 菜月, 森山 研介, 穴井 里恵, 亀山 有加, 濃野 ありさ, 岡野 寛子
    原稿種別: 技術論文
    2020 年 69 巻 4 号 p. 596-601
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    エコーとサーモグラフィーは外見上変化が認められない場合でも内部性状の変化に対する感度が高い。褥瘡発生のリスクが疑われる患者を対象にして仙骨,左右大転子部,左右踵を対象部位とし1週間ごとにエコーとサーモグラフィーを実施した。独自に考案した改訂エコースコア(①皮下組織構造・筋組織構造の不明瞭化,②貯留液を示す低エコー域,③筋膜・筋層の途絶,④浮腫像(敷石状エコー),⑤エア(点状の高エコー),⑥血流シグナルの描出,⑦深部到達度の7項目。これらを①~⑤は(-)0点,(±)1点,(+)2点,⑥はGrade 0~4点,⑦は,表皮1点,真皮2点,脂肪3点,筋肉4点とし,各々の合計点。)とサーモグラフィーでの健側点と患側点の温度差を経時的に比較することで褥瘡発生リスクの予見が可能であるのかを検討した。結果,対象者とコントロールとのエコー画像を比較すると踵では全員に,仙骨と大転子では一部で筋組織構造の不明瞭化が観察された(18例中10例)。サーモグラフィーでは30例中20例で患側点の温度低下が認められた。エコースコアが高く,サーモグラフィーで患側点の温度低下が観察できた例では,対策が遅延した場合,褥瘡が発生する可能性が高いと考えられる。よって褥瘡がまだ発生していない患者でも筋組織構造の変化,患側点の温度低下が観察できたことから,エコーおよびサーモグラフィーは早期褥瘡危険因子評価のツールとして利用できる可能性が示唆された。

  • 坪井 五三美, 町田 邦光, 中村 一人
    原稿種別: 技術論文
    2020 年 69 巻 4 号 p. 602-607
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    我々は,化学発光酵素免疫測定法を基本原理とした「ステイシアMEBLuxテスト ミトコンドリアM2」(以下,本試薬)を用いて,血清中の抗ミトコンドリアM2抗体検出の基礎的検討を行った。再現性(同時再現性および日差再現性)はCV 6.0%以内と良好な結果であった。ビリルビンF(遊離型),ビリルビンC(抱合型),溶血ヘモグロビン並びに乳びに対して影響は認めなかった。しかし,RFに対して負の影響を認めた。本試薬は,対照試薬「エリア ミトコンドリアM2」に対して良好な相関性を示した(y = 0.815x + 0.691, r = 0.803, n = 184)。しかし,本試薬のIndex 7.0未満の検体に対する相関性は回帰式y = 0.071x + 0.929,r = 0.482(n = 128)であった。これらの検体のうち19検体が対照試薬では陽性であった。判定一致率は81.5%と良好な結果であったが,陰性一致率は98.0%に比べ陽性一致率は73.2%と低かった。本試薬は,日常の臨床検査に問題なく対応できる試薬であるが,陰性データの判読には臨床的な背景に基づく考察が必要と思われた。

  • 金武 司, 塚本 英範, 庄司 晴香, 高橋 聡充, 星 翼, 大橋 さと子, 中野 勝彦
    原稿種別: 技術論文
    2020 年 69 巻 4 号 p. 608-614
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    近年,マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)の普及により菌種同定が短時間で可能となった。しかしながら,MALDI-TOF MSではKlebsiella oxytocaRaoultella spp.はマススペクトルが非常に類似しているため鑑別は困難とされている。そこで今回,MALDI Biotyper(ブルカー・ダルトニクス)におけるK. oxytocaおよびRaoultella spp.の同定能を生化学的性状検査を用いて検討した。当院臨床検体から分離され,MALDI BiotyperでScore Value 2.0以上かつScore Rank 1位の菌名にK. oxytocaもしくはRaoultella spp.が候補として挙げられた124株およびATCC標準菌株2株を対象とした。生化学的性状検査とMALDI Biotyperによる同定結果を比較すると,K. oxytocaは菌種レベルで100%一致し,Raoultella spp.も属レベルで100%一致したが,菌種レベルの一致率は23.5%(8/34)であった。Raoultella spp.の菌種レベルの同定には生化学的性状検査などの追加試験が必要である。

  • 久住 裕俊, 大石 祐, 村越 大輝, 白川 るみ, 平松 直樹, 薗田 明広, 島田 俊夫
    原稿種別: 技術論文
    2020 年 69 巻 4 号 p. 615-622
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    可溶性インターロイキン2受容体(soluble interleukin 2 receptor; sIL-2R)は悪性リンパ腫の診断補助や治療効果の判定に有用とされている。本研究では,化学発光酵素免疫測定法(chemiluminescent enzyme immunoassay; CLEIA)を測定原理とした試薬(ルミパルスプレストIL-2R,富士レビオ株式会社)とラテックス免疫比濁法を測定原理とした試薬(ナノピアIL-2R,積水メディカル株式会社)の基礎的性能評価およびCLEIAを測定原理とした従来法である外部委託検査法(デタミナーCL IL-2R,日立化成ダイアグノスティックス・システムズ株式会社)との比較を行い,院内導入における妥当性について評価した。両試薬の基礎的性能は良好であり,日常検査法として十分な性能を有していた。しかし,ナノピアIL-2Rでは非特異反応を示す検体が存在するため,ラテックス免疫比濁法を使用する場合は非特異反応の発生を考慮した上で,回避方法を施して注意深く使用することが望まれる。sIL-2R測定試薬を日常検査法として導入することにより当日の結果報告が可能となることで,即座に治療法を選択することが可能となり臨床への貢献が期待される。

  • 上市 裕子, 小川 舞子, 飛田 明子, 下坂 浩則, 佐藤 智明, 矢冨 裕, 蔵野 信
    原稿種別: 技術論文
    2020 年 69 巻 4 号 p. 623-630
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    原発性アルドステロン症(primary aldosteronism,以下PA)は,二次性高血圧症の中でも最も頻度が高く,放置した場合,臓器障害をきたす可能性が高い臨床的に重要な疾患である。PAのスクリーニングとしてアルドステロン/レニン比が広く用いられているが,放射免疫測定法(radioimmunoassay; RIA)が主流であったため,医療機関での診察前検査としてはこれまで普及していなかった。本検討では化学発光酵素免疫測定法(chemiluminescent enzyme immunoassay; CLEIA)を測定原理とする自動化学発光酵素免疫分析装置Accuraseed(富士フイルム和光純薬株式会社,以下Accuraseed)のアルドステロン及びARC(active renin concentration)の基礎的検討を行い,その有用性について評価した。再現性・希釈直線性・共存物質の影響について良好な結果が得られ,他法[ARC:酵素免疫測定法(enzyme immnoassay; EIA),アルドステロン:RIA法]との相関も概ね良好であった。

  • 丸尾 理恵, 金子 誠, 坂寄 輔, 渡邊 ゆり, 佐藤 金夫, 佐藤 智明, 尾崎 由基男, 矢冨 裕
    原稿種別: 技術論文
    2020 年 69 巻 4 号 p. 631-639
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    【背景・目的】血小板凝集能検査(透過光法)は,自動測定器で数多くの検査を実施可能となった。しかし多検体処理では,機器内での検査待ち時間延長により検体の多血小板血漿(PRP)は長時間静置状態となる。細胞である血小板は沈降し検査前の撹拌がないと血小板分布が不均一な検体となること,また採血後の時間経過による血小板反応性の変化も懸念される。この静置の血小板凝集への影響を検討した。【方法】健常人から作製したPRPにADP(0.5, 2 μM)とコラーゲン(0.5, 2 μg/mL)を用いて1)PRP作製後に静置状態0,30,90,150,210分後,測定直前に撹拌あり・なしの血小板凝集反応の変動,2)PRP作製後180分の静置検体の上・下層および撹拌後の血小板数を比較した。【結果・結語】血小板凝集反応は,凝集刺激の強い場合に150分の静置検体まで安定したが,ADP低濃度刺激では30~90分後がピークで以後は減弱した。長時間静置検体で測定前に撹拌すると反応が減弱した。一方,静置検体の血小板数は検体の上下部で10%程度の差は生じたが凝集反応に影響はなかった。したがって,血小板反応の有無を確認する強刺激を負荷する検査は,検査前には撹拌は不要で,静置の影響はないことが示唆された。一方で,弱刺激による血小板活性化反応を判定するには,採血後から検査までの時間が重要で,検査のタイミングに注意する必要がある。

  • 滝澤 旭, 佐々木 文雄, 小池 和弘, 奥田 舜治, 大沢 伸孝
    原稿種別: 技術論文
    2020 年 69 巻 4 号 p. 640-645
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    我々は,尿遠心上清液中に24種類の蛍光物質の検出,確認し報告している。今回,尿沈渣中に蛍光を持つ結晶(無晶性尿酸塩,尿酸アンモニウム塩,尿酸),精液や糞便由来と思われる植物繊維,ムコ多糖体様物質,花粉などが蛍光を持つことを確認した。尿沈渣から分離精製した無晶性尿酸塩,尿酸結晶などのブタノール抽出液の蛍光スペクトル分析,薄層クロマトグラフィー(thin-layer chromatography; TLC)分離から,これらの結晶に4~7種類の蛍光物質の存在を確認した。これらの蛍光物質は結晶や結石形成時,尿の上清液中に存在する蛍光物質が取り込まれたものであると推察した。

  • 中島 あつ子, 藤代 政浩, 鎌田 泰至, 三木 隆治, 宇根 陽子, 党 雅子, 春木 宏介
    原稿種別: 技術論文
    2020 年 69 巻 4 号 p. 646-651
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    最近,カタラーゼ活性低下のケースで酵素法によるヘモグロビンA1c(以下,HbA1c)測定試薬「ノルディアN HbA1C」(以下,従来試薬)の偽高値が報告された。今回,偽高値発生リスクを抑制するために改良された積水メディカル社の「(RE)ノルディアN HbA1C」(以下,本試薬)の基礎的検討を行った。同時再現性は変動係数0.42~0.68%,希釈直線性はNGSP値3.16~17.64%まで直線性が認められた。正確性は98.4~101.4%,オンボード安定性は28日までは良好な結果が得られた。遊離型ビリルビンは50 mg/dLまで,抱合型ビリルビンは50 mg/dLまで,乳びは3,000ホルマジン濁度まで,アスコルビン酸は50 mg/dLまではHbA1c測定に及ぼす影響は特に認められなかった。従来試薬との相関はn = 56で相関係数0.998と高く,回帰式はy = 1.000x + 0.010であり,極端な乖離検体も認められなかった。以上の結果より,基本性能が良好であることを確認した。また,従来試薬において偽高値となった2検体については,他社酵素法試薬と差は認められず,本試薬は偽高値抑制効果を有することが示唆された。本試薬は基礎的性能が良好であり,偽高値発生リスクも抑制されており,日常検査に有用である。

資料
  • 松坂 絵里香, 大西 真弓, 高橋 佳孝, 清水 幸裕
    原稿種別: 資料
    2020 年 69 巻 4 号 p. 652-659
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    動脈硬化性疾患(脳心血管疾患)による死亡は,日本の死因統計で全体の約24%を占めている。動脈硬化の進展を予防するためには,その発症を早期の段階で,精度・効率よくスクリーニングすること,すなわち,その初期段階で起こる血管内皮機能低下を捉えることが予防医学上重要である。生活習慣病や冠動脈疾患等を有する患者を対象にした血管内皮機能評価の報告は数多くあるが,日常,医療機関で働き,通院歴のない医療従事者(以下,医療従事者)での報告はされていない。今回我々は,血管内皮機能を反映する血流依存性血管拡張反応(flow-mediated dilation; FMD)検査を用いて,医療従事者における血管内皮機能を測定し,血管内皮機能低下に関与する各種血液データや身体所見および生活環境因子を解析した。その結果,医療従事者74名のうち27名(36%)で血管内皮機能の低下(%FMD値低下)を認め,その要因解析では,年齢,血圧,血糖値,喫煙など今までにも報告されている因子の関与が同様に示された他,正常範囲内であってもHDLコレステロール低値が%FMD値低下に単独で関与しており,血管内皮機能低下の早期診断に有用である可能性が示唆された。動脈硬化性疾患の発症を減らすためには,血管内皮機能低下の早期診断,早期介入が重要であり,これらの要因解析が高危険群の絞り込みに有用であると考えられる。

  • 東 学, 山下 和也, 石田 克成, 松原 真奈美, 林 裕司, 坂根 潤一, 鈴木 俊紀, 古屋 周一郎
    原稿種別: 資料
    2020 年 69 巻 4 号 p. 660-670
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    近年,コンパニオン診断やがんゲノム医療用検体の質を担保するために10%中性緩衝ホルマリン液(10% neutral buffered formalin solution; 10% NBFS)による組織固定が各ガイドラインにより推奨されている。日臨技病理検査フォトサーベイ実施時,国内における組織固定手技の統一化を目的として2015年よりアンケート調査と啓発を繰り返してきた。調査開始当初から2019年までの経年的な10% NBFS採用率は,生検検体用で38.5%(416/1,081施設)から80.0%(902/1,127施設)へと上方修正され,手術摘出検体用においても31.6%(342/1,081施設)から72.1%(805/1,116施設)へと改善された。10% NBFSの採用を拒む理由として,以前から使用していないことや固定能力が悪いことを挙げ,一方採用した施設ではコンパニオン診断への積極的対応であることが窺える。2017年の組織固定時間についての調査では,生検組織および手術摘出検体共に概ね72時間以内に固定完了しており,さらに10% NBFSによる48時間以内の固定完了を実践している施設は,生検検体で59.6%,手術摘出検体で41.9%程度に留まる。今後,病理検査の標準化として固定手技の改善を図り,患者がどの地域においても不利益の無いよう検体の質的保存に努めるべきである。

症例報告
  • 盛合 亮介, 近藤 崇, 望月 真希, 山田 暁, 遠藤 明美, 淺沼 康一, 柳原 希美, 髙橋 聡
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 69 巻 4 号 p. 671-676
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    ループスアンチコアグラント・低プロトロンビン血症症候群(lupus anticoagulant-hypoprothrombinemia syndrome; LAHPS)はループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant; LA)陽性で低プロトロンビン血症を伴い,しばしば出血傾向を呈する。今回,活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time; APTT)クロスミキシングテストが診断の一助となったLAHPSの1例を経験したので報告する。症例は2歳,女児。扁桃炎を発症後,皮下出血が出現し,凝固検査でプロトロンビン時間(prothrombin time; PT),APTTの延長を指摘され,当院小児科紹介受診となった。PT,APTT延長原因の検索のため,APTTクロスミキシングテストを実施した。その結果,即時型,遅延型ともに同様な上に凸パターンを示し,LAの存在が示唆された。追加検査でLAが検出され,第II因子活性も4.1%と低下していた。抗核抗体は陰性であり,自己免疫疾患の可能性は低く,扁桃炎の既往歴があることより,何らかの感染を契機に発症したLAHPSと診断された。本症例を経験して,APTTクロスミキシングテストは凝固時間延長原因の迅速な推測に有用であることを再認識した。

  • 根岸 美葉, 滝川 久美子, 中村 文子, 小栗 豊子, 乾 啓洋, 石井 清, 小倉 加奈子
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 69 巻 4 号 p. 677-682
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    40歳台の男性。性行為後の関節痛を主訴に当院を受診した。来院時の血液検査では炎症所見が認められ,血液培養からNeisseria gonorrhoeaeが検出されたことから播種性淋菌感染症と診断された。血液培養からGram陰性球菌が検出された場合一般的にNeisseria meningitidisを疑うが,翌日の分離培養でヒツジ血液寒天培地にも良好に発育したこと,細菌性髄膜炎の迅速抗原検査キットであるPASTOREXメニンジャイティスキットによるN. meningitidisの免疫学的検査の結果陽性を示したことから両者の鑑別に苦慮した。N. gonorrhoeaeN. meningitidisの保存菌株を用いて,ヒツジ血液寒天培地とチョコレート寒天培地での発育性とPASTOREXメニンジャイティスキットによるN. meningitidisの免疫学的な反応を検証したところ,発育性状に両者の差は認められなかった。しかしながら,N. gonorrhoeaeの6株中3株は,N. meningitidisのY/W135特異抗体感作ラテックスと弱い凝集が認められた。N. gonorrhoeaeN. meningitidisの鑑別には,生化学的性状や質量分析によって最終確認する必要がある。

  • 藤上 卓馬, 酒巻 尚子, 鈴木 康太, 三澤 千鶴, 髙嶋 幹代, 中根 生弥, 梶田 光春
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 69 巻 4 号 p. 683-688
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    骨髄性プロトポルフィリン症(EPP)は,ヘム合成経路のフェロケラターゼ(FECH)の活性低下によりプロトポルフィリンIXが蓄積して発症する不完全常染色体顕性遺伝性疾患であり,光線過敏症を契機に発見されることが多い。今回,EPPが疑われた光線過敏症を呈する10歳代男児について,血液検査ならびに赤血球光溶血試験,赤血球蛍光試験を施行した。血液検査で異常所見は認められなかったが,赤血球光溶血試験,赤血球蛍光試験ともに陽性であった。追加検査では赤血球中プロトポルフィリン体のみが高値であり,他のポルフィリン体は正常値であることからEPPと診断された。また,遺伝子検査でFECH遺伝子にexon6 c.683C>T(p.Pro228Leu)をヘテロ接合体に認め,遺伝子多型IVS3-48Cが変異アリルの対側にある発症パターンであった。赤血球光溶血試験と赤血球蛍光試験を自施設で施行したことでEPPの早期診断に繋がった症例である。

  • 金子 洋平, 松坂 香織, 酒井 隆弘, 潮屋 春菜, 小丸 検造
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 69 巻 4 号 p. 689-694
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    今回我々は,術前検査を契機に診断された稀な腫瘍である有毛細胞白血病(hairy cell leukemia; HCL)の1症例を経験したので報告する。症例は48歳,男性。前医にて副鼻腔炎の診断で治療を施行するも改善せず,当院耳鼻咽喉科受診。鼻中隔弯曲症の診断で手術適応となり,術前検査を施行。血液検査でWBC 14.7 × 109/Lと増加しており,末梢血スメアを鏡検し,広く明るい細胞質で円形~卵円形核を有し,核クロマチンは軽度凝集するリンパ球を79.0%認めた。慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia; CLL)等を疑ったが,細胞表面マーカー解析で,CD19,CD20,CD22が陽性,CD5,CD23は陰性であり,否定的であった。自然乾燥スメアを作製したところ,細胞質から飛び出した毛髪状の突起を持つ細胞(hairy cell; HC)を認め,追加の表面マーカー解析でCD11cが陽性であり,HCLを疑った。HCLの診断は,細胞形態や特殊染色,細胞表面マーカー,遺伝子検査等の総合的な解析が必要である。CLL等の他の成熟B細胞性リンパ増殖性疾患が否定的で,HCLを疑う場合は,自然乾燥スメアでHCを確認することが早期診断に繋がると思われる。

  • 小堺 智文, 桐井 靖, 原 美紀子, 岩本 拓朗, 太田 浩良
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 69 巻 4 号 p. 695-700
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
    ジャーナル フリー HTML

    膵退形成癌は予後不良な悪性腫瘍である。膵多形細胞型退形成癌の成分を含む浸潤性膵管癌の1剖検例での捺印細胞像を報告する。70歳代男性。他院にてヘモグロビンA1cの急上昇のため,当院に紹介受診された。腹部CTにて膵体部腫瘍と多発肝腫瘤を認めた。経過約8ヵ月で膵癌により永眠され,病理解剖が施行された。膵体部に境界明瞭な直径25 mmの腫瘍を認め,捺印細胞診標本を作製した。細胞学的には,細胞多形性を示す大型異型細胞が散在性から集塊で多数観察され,核異型を示す多核巨細胞も認められた。また,腺癌成分と扁平上皮癌成分が混在していた。組織学的には,扁平上皮癌成分を伴った腺癌を背景に,多形細胞型退形成癌を含む浸潤性膵管癌と診断された。肝臓多発腫瘤は膵癌の転移と診断された。本例では捺印細胞診で多形細胞型退形成癌の典型的な細胞像が確認された。

特集論文
  • 保科 ひづる, 羽原 利幸, 小関 紀之, 内田 一豊, 岡田 茂治, 小澤 優
    原稿種別: 特集論文
    2020 年 69 巻 4 号 p. 701-710
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/29
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    日本臨床衛生検査技師会穿刺液検査標準化ワーキンググループは,穿刺液(体腔液)検査の臨床的意義と施設間差の是正を目指し,細胞数算定法,細胞分類法,報告法についてまとめ日常検査法として推奨する。細胞数算定は細胞数(個数/μL)とし,赤血球以外のすべての細胞を算定する。細胞分類は,サムソン3分類法またはギムザ3分類法を用いる。サムソン3分類法は,多形核球・リンパ球・その他の細胞の3分類,ギムザ3分類法は,好中球・リンパ球・その他の細胞に分類する。分類細胞は,百分率(%)で表示する。その他の細胞の分類が可能な場合は,補足として詳細に記載する。3分類法による報告は,急性炎症と慢性炎症,漏出性の病態が示唆でき,臨床的意義1)と結びつく結果報告である。またこれらは,一次スクリーニングとしても役立ち,微生物学的検査や細胞診検査などへのきっかけとなる。

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